2019年1月10日木曜日

【ビエールのオトナ社会科見学】ホイコーローを作る[その82]







「家の中だけだったらまだしも、外にもパジャマで出掛けるんだもの」

『内田有紀』に酷似した女性は、夫への不満を口にした。いや、それは、多分、リアルな声として発せられたのではなかったであろう。

しかし、ビエール・トンミー氏には、その『声』が聞こえた。

「(えええ!『オータニ・リョーヘイ』も!)」

そうだ、『オータニ・リョーヘイ』も、であるのだ。

「ご主人様は、その点、今日お召しのものも素敵で、とっても紳士ですわ」
「(良かった…….いつもは……)」

と心の中で云い掛けて、ビエール・トンミー氏は、言葉を止めた。

『内田有紀』に酷似した女性の『声』がリアルなものでないのなら、自分の心の声も彼女に聞こえるかもしれない。

自分も、普段は、パジャマだ。寝る時は勿論、昼間の家の中でも、そして、外出する時にも、着ているのは、パジャマなのだ。

散歩も、スーパー・百貨店への買い物も、銀行にだってパジャマで行くのだ。

四六時中パジャマでいるので、臭い。

「それに、ご主人って、『BURNING BARBERSHOP』を身に纏っていらっしゃるし」

この日は、『オトナ社会科見学』として、味の素の工場見学であったので、それも、『味の素うま味体験館』で調理体験もあるから、とビエール・トンミー氏は、妻の指示で妻好みの服を着て出掛けてきた。

そして、体に染み付いたパジャマ臭を消すべく、『BURNING BARBERSHOP』を付けたのだ。



「ああ、『BURNING BARBERSHOP』って、アタシ…..ああん!」
「(んぐっ!んぐっ!)」


(続く)


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