「(『フェブリナナノアクア』なのか?)」
ビエール・トンミー氏が、口中で呟いたのは、コスメの名前であった。
「(『内田有紀』さんは、そうだ、『フェブリナナノアクア 炭酸ジェルパック』を使っている、と聞いたことがある)」
ビエール・トンミー氏は、鼻腔に吸い込んだ香りを、、それまで嗅いだことのない香りを『内田有紀』さんが使っているらしいコスメのものと思ったのだ。
「(ああ!......ああ!)」
「オジサン、ママは、『内田有紀』じゃないよ」
『ユキ』と呼ばれた少女のiPhone越しの視線が、ビエール・トンミー氏を覚醒させようとした。しかし、その時、
「♫風が運んんだあ♪」
総ての神経は嗅覚に集中していたはずであったが、ビエール・トンミー氏の耳には、ある歌が聞こえ始めていた。
(続く)
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