「ああ、私も、いつまでもこの匂いを感じていたい……」
「(え?)」
ビエール・トンミー氏は、横を見たかったが、そうすることができなかった。
「(い、い、今の声は….)」
そうだ。並んで立つ女性の声が、リアルな声なのか、或いは、自分の心にだけ聞こえる『声』であるのか、確かめたかった。しかし、今まさに、『ユキ』と呼ばれる少女が、自分たちをiPhoneで写真を撮ろうとしているのだ。
「『BURNING BARBERSHOP』ですわね?」
「(え!?え!?え!?)」
確かにその日、ビエール・トンミー氏は、『D.S.&DURGA』のフレグランス『BURNING BARBERSHOP』を付けていた。
「ああ、この匂い、これが『男』の匂い…..」
そう、『BURNING BARBERSHOP』は文字通り、『BARBERSHOP』(床屋)の匂いだ。床屋は、男の世界だ。
「(『有紀』さん…..)」
「アタクシ、なんだか変になっちゃいそう」
「(んぐっ!」
ああ、また股間に『異変』である。
(続く)
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