(住込み浪人[その104]の続き)
「(まもなく知ることになるわ。その臭いの正体を)」
EBSテレビのクイズ番組『テイトー王』の収録中、混乱に陥り、絶不調な『サトミツ』への敵意をマスクの下に隠したアシスタント・ディレクターの松坂慶江の予告実現への扉を開く宣言が為された。
「さあ、いよいよファイナル・ステージ!ここで、芸能人チームには、スペシャル・サポーターが登場でーす!」
『テイトー王』の司会の一人、お笑い芸人のナンカイノー・アメカイノーが、片手を上げ、その手でスタジオの隅を差した。
「え!?」
いきなりスポット・ライトが当てられた。『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、頭を左右に振り、何かを探した。スポット・ライトが当てられた人物を探したのだ。
「あなたよ!」
と、ポンとお尻を叩かれ、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、振り向いた。
「あなたが、芸能人チームのスペシャル・サポーターなの!」
アシスタント・ディレクターの松坂慶江であった。
「いや、何も聞いていませんが…..」
「だって、何も説明してないもの。あなたが驚くところも番組の狙いなのよ」
『テイトー王』への出演を依頼はされたが、その出演形態については、一切説明がなかったが、特別気にはしていなかった。初めてのテレビ局で、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、それどころではなかったのだ。
「オッカーのシータ……」
と、鼻歌のように小声で歌う、長髪を真ん中分けし、膝上15cmのミニスカートを履いていた『アマゾネス・ジャン』に局内の廊下で会った。『アマゾネス・ジャン』は、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年のお気に入りであった。
いや、正確には、『アマゾネス・ジャン』がミニスカートから剥き出しにした『太もも』がお気に入りであったのだ。
「(んぐっ!)」
控室では、かつては絶世の美女であり、今も年齢を感じさせぬ美貌の持ち主である『デヴィル夫人』のつけている香水の匂いに、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の股間は再び、『反応』した。
「(んぐっ!)」
そしてまた廊下で、『岩原プロモーション』の現在の看板俳優にして事実上の代表である『渡蟹徹夜』から、友人のエヴァンジェリスト青年のことを執拗に訊かれたのだ。『渡蟹徹夜』は、エヴァンジェリスト青年の『岩原プロ』入りを望んでいるからである。
『渡蟹徹夜』の質問を受けているところに、自らの横を通り過ぎていく匂いが漂ってきた。
「(は!『サトミツ』!...んぐっ!)」
そうだ。芳しい匂いの正体は、『サトミツ』であった。
..........….と、テレビ局の中では、様々な出来事に遭遇し、『テイトー王』での出演形態については、一切説明がないことに気を留めている暇はなかったのだ。
(続く)
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