2019年6月14日金曜日

住込み浪人[その117]







「(君とボクとは、価値観を同じくするのだ)」

EBSテレビのクイズ番組『テイトー王』を収録中のスタジオCで、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、誰に聞かれることもなく、心の声で、観客席にいる友人のエヴァンジェリスト青年に、彼の魂に、語りかけた。

「(そうだ…….だから、ボクは『テイトー』入学を辞退したのだ)」
「(…………..)」

友人は、無言である。

「(だから、ボクは今、答えない。このボードに『椿象』と書かない)」

回答席に座ったまま、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、背筋を伸ばした。



「(何?)」

『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』は、敵の姿勢が自信たっぷりなものに見えたのだ。

「(書けたのね。『椿象』だと知っていたのね。やはり侮れないわ)」

もう一人、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の正解を信じた者がいた。

「スミローちゃーん!さすがよー!」

オバチャンである。OK牧場大学の学生食堂のカレー担当のオバチャン『サキ』である。


(続く)



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