(住込み浪人[その129]の続き)
「さあ、これからスクリーンに、あるヨーロッパの企業の略称が出ます。その企業は何か、答えよ!読み方も、正式名称も合せて答えよ!」
EBSテレビノスタジオCで収録が進むクイズ番組『テイトー王』の司会者の一人、ナンカイノー・アメカイノーが、ファイナル・ステージの第3問、今回の最終問題を告げる。
「(え?ヨーロッパの企業?そんなもんは知らないなあ。まあ、いいか。どうせ回答しないんだ。あたかも、正解は知っているけど、でも答えないんだぞ、というそぶりを見せるだけなんだし)」
と、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、問題がスクリーンに映し出される前から、背筋を伸ばして見せた。
「(ああ、そうだ。さすがだ。それでこそ、ビエールだ。知性を見せない、それが、男の、いや、人間のダンディズムだ)」
観客席のエヴァンジェリスト青年の視線が語る。
「(負けないわー!最後に500ポイントなんて、これまで無能に見せて、最後の最後で『住込み浪人』に正解させて、芸能人チームの大逆転、それがプロデューサーの狙いね!負けないわー!)」
『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』は、これまでにない程にムキになっていた。
「(エヴァよ。これだな。あんな風になるな、と君は云いたいんだな)」
冷静に『サトミツ』を凝視める『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の理性は、友人の意図を捉えたが、
「(んぐっ!んぐっ!)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の股間には、別の人格が存在していたのであった。
「(ああ、『サトミツ』……)」
(続く)
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