2019年6月12日水曜日

住込み浪人[その115]







「(エ、エ、エヴァ…….)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、回答ボード上でマジックを持つ手を止めていた。EBSテレビのクイズ番組『テイトー王』を収録中のスタジオCである。

「(君も応援に来ていたのか、エヴァちゃん)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の両眼を射てきていた光の主は、そう、エヴァンジェリスト青年であった。

「(…………..)」

エヴァンジェリスト青年は、心から何を発せず、ただ冷徹な視線を『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に向けていた。

「(何?何なんだ?君は、何を云いたいのだ?)」
「(…………..)」
「(云いたいことがあるなら、いつもように心の声で云えばいいじゃないか!)」

その時、エヴァンジェリスト青年の冷徹な視線は、『サトミツ』に向けられた。

「(え?)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年も、『サトミツ』に視線を回した。

『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』は、必死に、文字通りと云っていい程に必死に、回答ボードにマジックを走らせていた。


「(『サトミツ』は書けるんだ。やはり『カメムシ』をちゃんと『椿象』と書けるんだ。さすがだ)」

そして、その必死の横顔を見て、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、思わず、

「(んぐっ!)」

と股間を『反応』させた。

「(ふん!)」
「(え?)」


(続く)



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