(住込み浪人[その114]の続き)
「(エ、エ、エヴァ…….)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、回答ボード上でマジックを持つ手を止めていた。EBSテレビのクイズ番組『テイトー王』を収録中のスタジオCである。
「(君も応援に来ていたのか、エヴァちゃん)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の両眼を射てきていた光の主は、そう、エヴァンジェリスト青年であった。
「(…………..)」
エヴァンジェリスト青年は、心から何を発せず、ただ冷徹な視線を『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に向けていた。
「(何?何なんだ?君は、何を云いたいのだ?)」
「(…………..)」
「(云いたいことがあるなら、いつもように心の声で云えばいいじゃないか!)」
その時、エヴァンジェリスト青年の冷徹な視線は、『サトミツ』に向けられた。
「(え?)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年も、『サトミツ』に視線を回した。
『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』は、必死に、文字通りと云っていい程に必死に、回答ボードにマジックを走らせていた。
「(『サトミツ』は書けるんだ。やはり『カメムシ』をちゃんと『椿象』と書けるんだ。さすがだ)」
そして、その必死の横顔を見て、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、思わず、
「(んぐっ!)」
と股間を『反応』させた。
「(ふん!)」
「(え?)」
(続く)
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