(住込み浪人[その122]の続き)
「はーい!時間です」
EBSテレビのスタジオCで収録中のクイズ番組『テイトー王』の司会者の一人、ナンカイノー・アメカイノーが、右手を開いて前に突き出し、回答ストップを命じた。
「では、皆さんの回答を一斉に開きまーす!」
というナンカイノー・アメカイノーの声と共に、回答者全員のボードがスクリーンに映し出された。
「正解は、この方々でーす!」
と、ナンカイノー・アメカイノーが明かした正解者は、スクリーンに映し出されたボードが、点滅した。
『テイトー』チーム3名は、全員正解、芸能人チーム3名には、誰も正解者はいなかった。
「正解は、『テイトー』チームの皆さんの回答の通り、『烏滸がましい』と書きます」
ナンカイノー・アメカイノーは、更に続ける。
「では、どうして『烏滸がましい』と書くのか、お判りでしょうか?『佐藤ミツ』さん、説明して頂けますか?」
カメラは、『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』を捉えた。
「え?」
『サトミツ』は、ナンカイノー・アメカイノーの質問を聞いていなかった。美人も台無しな感じで口を開け、奥歯の銀歯が見えていた。
「(どうして?どうしてなの?)」
『サトミツ』は、敵を凝視めた。回答席に座ったまま、背筋を伸ばし、またもや自信たっぷりな様子を今も見せている『住込み浪人』ビエール・トンミー青年への疑問が、頭の中に渦巻いていた。
「(漢字を全部思い出せなかったの?いや、判ってたのね。だって、自信たっぷりだもの……じゃあ、どうして?どうしてなの?)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の回答ボードには、マジックで『烏』と書き、それをバッテンで消した跡が見えたのだ。
「スミローちゃーん!どうしたのー!?」
オバチャンである。OK牧場大学の学生食堂のカレー担当のオバチャン『サキ』は、我慢ならなかった。
「スミローちゃーん!アンタ、『エノキ』してんの!?」
(続く)
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