2019年6月4日火曜日

住込み浪人[その107]







「スミローちゃーん!頑張ってえー!」

黄色い声援、いや、少し黒ずんだ黄色い声援が、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に飛んだ。EBSテレビのクイズ番組『テイトー王』収録中のスタジオCである。

「(ええ?)」

聞き覚えのある声であった。『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、声のする方に顔を向けた。

「(オバチャン……)」

OK牧場大学の学生食堂でカレー担当するオバチャン『サキ』であった。


「(どうして?)」

どうしてもこうしてもない。カレー担当のオバチャンは、応援に来たのである。

「ビエさまあ!」

OK牧場大学の校庭で『住込み浪人』ビエール・トンミー青年を取り囲んだOK牧場大学の女子学生たちである。

OK牧場大学まで『住込み浪人』ビエール・トンミー青年をスカウトに来た『テイトー王』のディレクターに、

「みんな、スタジオに応援においで!」

と云われていたのである。

「へええ。浪人なのに、すげー人気じゃねえか!」

司会の一人のヒロニが、素で驚いた。

「それがねえ、ヒロニさん。ビエール・トンミー君は、ただの浪人ではないんです」

もう一人の司会者ナンカイノー・アメカイノーが、ついに肝心の説明を始めた。

「おお、よく見ると、結構、ハンサムじゃねえか」

ヒロニは、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年を凝視めた。


(続く)



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