(住込み浪人[その108]の続き)
「(まさかあ!?....でも、どうして?)」
EBSテレビのスタジオCで収録中のクイズ番組『テイトー王』の司会者の一人、ナンカイノー・アメカイノーは、所謂『ブサイク芸人』の代表格であったのだ。sのブサイク芸人を、観客席の背後に、黒いサングラスに白いマスクをつけた黒のワンピースを着た女は、見て、
「(んぐっ!)」
と自らの体に『異変』を生じさせていたのだ。
「(勘違いかしら?)」
その『異変』を察知した『テイトー王』のアシスタント・ディレクターの松坂慶江は、理屈に合わないその状況を思考から排除しようとした。
しかし、正体不明の女は、
「実は、このビエール・トンミー君は…….」
と、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が、クイズ番組『テイトー王』に特別参戦してきた理由を説明し始めているナンカイノー・アメカイノーしか見ていなかった。
「(んぐっ!)」
松坂慶江は、ヘッドセットをつけた頭を掻きむしった。
「(どうして?貴女、誰?)」
松坂慶江は、知らなかった。いや、その時は、そのスタジオにいる誰も、そして、ごく一部の人間を除き芸能界の誰も、その正体不明の女が、ナチュラルメイクの美人女優『赤井ミー』であり、ナンカイノー・アメカイノーとその赤井ミーとがその日、極秘入籍していたことを知らなかったのだ。
程なく、二人の結婚は、スポーツ紙にすっぱ抜かれ、『美女と野獣』の結婚と称されることになるのであったが。そして……..
「(んぐっ!)」
美女も野獣に恋することはあり、美女が愛する野獣の番組を見学に来ている、ということに誰も気付かないまま、......そう、映画『フラフラガール』で人気を博した美人女優が、『ブサイク芸人』の代表格の男の魅力にフラフラとなっていることに誰も気付かないまま、『テイトー王』は進行していった。
(続く)
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