(住込み浪人[その121]の続き)
「(いや、分ってるよ)」
EBSテレビのクイズ番組『テイトー王』収録中、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の視線は、観客席の闇に潜む友人に向いていた。
「(ああ、あれは、さっきまでのボクの姿だ)」
視線を今度は、『サトミツ』に向けた。
「(んぐっ!)」
と、必死な『サトミツ』の姿に『反応』する股間とはアンチノミーな理性は、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年をして、友人エヴァンジェリスト青年の云わんとすることを理解させていたのだ。
「(正解は、判っている)」
「(…………..)」
「(ああ、だが、答えない)」
「(…………..)」
「(そうだ。『サトミツ』はあれでいい。『サトミツ』なのだから)」
「(…………..)」
「(しかし、ボクは……..)」
「(…………..)」
「(だから、ボクは今、答えない。このボードに『烏滸がましい』と書かない)」
回答席に座ったまま、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、背筋を伸ばした。
「(何?)」
『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』は、またもや敵の姿勢が自信たっぷりなものに見えたのだ。
「(書けたのね。『烏滸がましい』と書けたのね。やはり侮れないわ)」
「ブーッ!」
EBSテレビのクイズ番組『テイトー王』を収録中のスタジオCにブザー音が響いた。
(続く)
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