2019年6月28日金曜日

住込み浪人[その131]







「『SNCF』」

クイズ番組『テイトー王』を収録するEBSテレビのスタジオCの大スクリーンに、4文字のアルファベットが映し出された。ファイナルステージの第3問、今回の最終問題である。

「(ああ、『エスエヌセーエフ』ね。ふふ。簡単だわ)」
「(ああ、『エスエヌセーエフ』か。なーんだ)」

『サトミツ』と『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が同時に、同じ反応を示した。

しかし……..

「(え?どうして、ボクは……)」

と、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の脳裏には、疑問も走った。その一瞬の疑問が、早押しボタンを押す速さに違いを生じさせた。

「ピンポーン!」

『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』が、回答権を得た。

「おお、さすがですねえ、『サトミツ』。では、回答をお願いします!」

司会者の一人、ナンカイノー・アメカイノーは、『サトミツ』を持ち上げる。

「フランス国有鉄道!」

金剛力士のような形相で、『サトミツ』は回答を発した。


「正解でーす!」

と、ナンカイノー・アメカイノーが、右手を高く上げた時、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は思った。

「(そうだ、フランス国鉄だ。しかし、どうしてボクは知っているのだろう?)」

上げた右手を下ろしたナンカイノー・アメカイノーは、言葉を続けた。

「では、『サトミツ』、『SNCF』の正式名称をボードに書いて下さい!」

『サトミツ』は直ぐに、ボードにマジックを走らせる。そして、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年も、ボードにマジックを走らせる。無意識な行動であった。


(続く)



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