(住込み浪人[その130]の続き)
「『SNCF』」
クイズ番組『テイトー王』を収録するEBSテレビのスタジオCの大スクリーンに、4文字のアルファベットが映し出された。ファイナルステージの第3問、今回の最終問題である。
「(ああ、『エスエヌセーエフ』ね。ふふ。簡単だわ)」
「(ああ、『エスエヌセーエフ』か。なーんだ)」
『サトミツ』と『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が同時に、同じ反応を示した。
しかし……..
「(え?どうして、ボクは……)」
と、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の脳裏には、疑問も走った。その一瞬の疑問が、早押しボタンを押す速さに違いを生じさせた。
「ピンポーン!」
『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』が、回答権を得た。
「おお、さすがですねえ、『サトミツ』。では、回答をお願いします!」
司会者の一人、ナンカイノー・アメカイノーは、『サトミツ』を持ち上げる。
「フランス国有鉄道!」
金剛力士のような形相で、『サトミツ』は回答を発した。
「正解でーす!」
と、ナンカイノー・アメカイノーが、右手を高く上げた時、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は思った。
「(そうだ、フランス国鉄だ。しかし、どうしてボクは知っているのだろう?)」
上げた右手を下ろしたナンカイノー・アメカイノーは、言葉を続けた。
「では、『サトミツ』、『SNCF』の正式名称をボードに書いて下さい!」
『サトミツ』は直ぐに、ボードにマジックを走らせる。そして、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年も、ボードにマジックを走らせる。無意識な行動であった。
(続く)
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