(うつり病に導かれ[その39]の続き)
「(んん?なんだ?」
ビエール・トンミー氏は、腹部に何か柔らかな、なんだかとても柔らかなものを感じた。
「(なんだ、これは?)」
倒れ込んだまま60歳台と思しきふくよかな女性が、そこもふくよかな胸をビエール・トンミー氏の腹部に押し当てていたのだ。
「(んぐっ!)」
ビエール・トンミー氏の顔は真っ赤となった。
「母さん!早く起きて!こちらの方、とっても苦しそうよ。起きて!」
娘は、必死となって、母親の体を引き起こした。
「(んぐっ!....いや、違う!)」
ビエール・トンミー氏は、慌てて股間に両手を当てた。
「申し訳ありません。母のせいで」
娘が頭を下げた。
「いえ、違います!.....あ!」
と、ビエール・トンミー氏が驚きの声を上げると同時に、
「あ!.....あなたは…」
頭を上げた娘も驚き、ビエール・トンミー氏を凝視めた。
「(内田有紀!...いや、外田有紀さん!)」
娘(といっても、40歳台と見えたが)は、ギャランドゥ・クリニックで出会った内田有紀に酷似した外田有紀であったのだ。
「(んぐっ!)」
ビエール・トンミー氏の顔は、再び、真っ赤となった。
「大丈夫ですか?」
「は?!いえ、大丈夫です」
「また、お腹、痛めました?」
と、外田有紀が、ビエール・トンミー氏の腹部に手を当ててきた。
「いや…」
「直ぐに先生に診てもらいましょうか?」
その時また、外田有紀の顔が間近に迫った。
「(んぐっ!)」
ビエール・トンミー氏の顔は、更に、真っ赤となった。
(続く)
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