(うつり病に導かれ[その48]の続き)
「あら、そうでしたの!」
ドクトル・マリコは、医師らしからぬ声で老患者に話す。
「祖父が広島出身で、私、子どもの頃、よく広島に参りましたの」
ドクトル・マリコは、老患者を凝視めて話す。
「(あ!沢口靖子!)」
ビエール・トンミー氏は、女医が沢口靖子に酷似していることを思い出した。
「(んぐっ!)」
思わず『反応』し、股間に両手を当てる。
「祖父は、牛田に住んでましたので、牛田にも参りましたわ!」
「え!」
「素敵なところでしたわ」
「ああ、昔は田舎でしたが」
「それに、祖父の家の近所に、素敵なお兄様がいらしたの」
「は?」
「とってもハンサムな高校生で、まるでジェームス・ボンドみたいでしたわ」
ドクトル・マリコの表情は、恋する乙女のものとなっていた。
「(んぐっ!)」
(続く)
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