2020年3月29日日曜日

うつり病に導かれ[その59]






「福岡行のJANA便にお乗りになったことはありませんこと?」

『スミコ』と呼ばれた八重歯の星由里子に酷似した女性は、『タノ9薬局』に処方薬を求めてきたビエール・トンミー氏に、そう質問した。

「あ、あ、ありますが…」

戸惑いながら、しかし、両手は股間に手を置いたまま、ビエール・トンミー氏は、答えた。

「似ていらっしゃるの」

『スミコ』と呼ばれた八重歯の星由里子に酷似した女性は、はにかみ、八重歯が光った。

「(……?)」

相手の云わんとすることは分らなかったが、好意を持って接してきているように感じる。

「私、JANAのCAをしてますの」

『スミコ』は、ビエール・トンミー氏を正面から凝視め、思いがけない言葉を発してきた。



「へ!?」

己の間抜けな声に、ビエール・トンミー氏は、顔面を真っ赤にした。

「パソコンは、何をお使いですの?」

『スミコ』は、更に思いがけない質問を浴びせてきた。

「は!?」
「Macですの?Windowsですの?」

頭の中の混乱に、ビエール・トンミー氏の股間は、萎んだ。


(続く)



0 件のコメント:

コメントを投稿