(うつり病に導かれ[その56]の続き)
「おや、スミコさん。手伝いに来てくれたのかい」
お婆ちゃん薬剤師『りき』が、振り向くと、八重歯が煌めいていた。
「(うっ)」
その煌めきの眩しさに、ビエール・トンミー氏は、股間に当てていた手を上げ、目を塞いだ。
「『りき』お婆ちゃん、青大将の云う通りよ。お客様を揶揄っちゃダメよ」
煌めく八重歯の主は、『スミコ』と呼ばれた女性であった。
「(え!)」
塞いでいた手を外して見た『スミコ』と呼ばれた女性の美しさに驚いただけではなかった。
「(誰だったか…?)」
そう、見たことのある女性であった。
「(あ!星由里子!)」
『スミコ』と呼ばれた八重歯の女性は、星由里子、いや、星由里子に酷似した女性であった。
「支払はどうする、ユーイチ?」
ビエール・トンミー氏は、お婆ちゃん薬剤師『りき』の言葉に我に返った。
「エヴァPayでお願いします」
とiPhoneを取り出し、エヴァPayのQRコードを見せた。
「アタシャね、ナントカPayなんつーの、わかりゃしないんだよ」
お婆ちゃん薬剤師『りき』は、皺だらけの顔を更に皺だらけにした。
(続く)
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