2020年3月27日金曜日

うつり病に導かれ[その57]






「おや、スミコさん。手伝いに来てくれたのかい」

お婆ちゃん薬剤師『りき』が、振り向くと、八重歯が煌めいていた。

「(うっ)」

その煌めきの眩しさに、ビエール・トンミー氏は、股間に当てていた手を上げ、目を塞いだ。

「『りき』お婆ちゃん、青大将の云う通りよ。お客様を揶揄っちゃダメよ」

煌めく八重歯の主は、『スミコ』と呼ばれた女性であった。





「(え!)」

塞いでいた手を外して見た『スミコ』と呼ばれた女性の美しさに驚いただけではなかった。

「(誰だったか…?)」

そう、見たことのある女性であった。

「(あ!星由里子!)」

『スミコ』と呼ばれた八重歯の女性は、星由里子、いや、星由里子に酷似した女性であった。

「支払はどうする、ユーイチ?」

ビエール・トンミー氏は、お婆ちゃん薬剤師『りき』の言葉に我に返った。

「エヴァPayでお願いします」

とiPhoneを取り出し、エヴァPayのQRコードを見せた。

「アタシャね、ナントカPayなんつーの、わかりゃしないんだよ」

お婆ちゃん薬剤師『りき』は、皺だらけの顔を更に皺だらけにした。


(続く)




0 件のコメント:

コメントを投稿