(うつり病に導かれ[その59]の続き)
「んんん…Macですが…」
ビエール・トンミー氏は、『タノ9薬局』のカウンターで対峙する『スミコ』の質問に回答し始めた。使用しているPCについて訊かれたのだ。Macであるのか、Windowsであるのか。
「あら!Macでしたの」
『スミコ』は、失望を隠さず、視線をビエール・トンミー氏から外した。
「いえ!」
ビエール・トンミー氏は、思わず声を上げた。Macと答えてもWindowsと答えても嘘ではなく、Macとか答えた方が女性受けがいいかと思い、Macを選択したが、それが間違いであることを知ったのだ。
「おおー!びっくりするじゃねえか」
カウンターの隣にいる田中邦衛に酷似した青大将が、大きく歪めた口から唾を飛ばしてきた。
「いえ、使っているのは、Macですが、使っているのはWindowsです。Macなんかじゃありません!」
と、説明したものの、それが訳の分からない説明であることをビエール・トンミー氏は、自覚した。
「はああ?仰っていることが…」
「ああ、申し訳ありません。使っているパソコンのハードウエアは、Macですが、そこで使っているOS、システムは、Windowsなんです」
と、説明したものの、それまた、普通の人にとっては訳の分からない説明であることを自覚した。
「もう結構ですわ!」
『スミコ』と呼ばれた八重歯の星由里子に酷似した女性は、何の衒いもなく頬を膨らませた。
「いえ、いえ、いえ!ごめんなさい。Macって、実は、Windowsのパソコンにもなるんです。正確には、今のMacには、つまり、インテルのCPUを搭載したMacには、『Boot Camp』というソフトウエアがあって、これを使って、Windowsをインストールできるんです」
「あら!『Boot Camp』なら、以前、よくしましたわ。ビリー隊長のDVDを買いましたの」
「あ、その『Boot Camp』ではないんですが…」
「んん、もう!」
(続く)
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