2020年3月11日水曜日

うつり病に導かれ[その41]






「あら、随分、お具合が悪そうですわ」

と、外田有紀が、吐いた息を顔に受けた。

「(んぐっ!)」

ビエール・トンミー氏の顔は、それ以上赤くなりようがない程に、赤9なった。鼻は詰まっていたが、芳しい香りを肺の中まで感じた。

「まあ、大変。とっても苦しそうですわ!」
「いえ、だ、だ、大丈夫です。風邪ですから」

再度、外田有紀が吐いた息を顔に受けた。

「(んぐっ!)」
「あら!?」

外田有紀が何かに気付いたかのように見えたが、

「松坂さーん」

受付が呼ぶ声がした。

「はーい!」

外田有紀が、返事をした。

「母もまだ具合が悪くてこちらに連れて参りましたの」

と云って、受付に向った。

….と、

「ん?」

右肩に何かを感じ、そちらに顔を向けた。

「え!」

外田有紀の母親、先程、倒れ込んできた女が、眼を閉じ、頭をビエール・トンミー氏の肩に乗せてきていた。



「……ふうう……」

苦しそうになっている女の顔を見た。

「(そうだった、松坂慶子だ!)」


(続く)




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