(うつり病に導かれ[その40]の続き)
「あら、随分、お具合が悪そうですわ」
と、外田有紀が、吐いた息を顔に受けた。
「(んぐっ!)」
ビエール・トンミー氏の顔は、それ以上赤くなりようがない程に、赤9なった。鼻は詰まっていたが、芳しい香りを肺の中まで感じた。
「まあ、大変。とっても苦しそうですわ!」
「いえ、だ、だ、大丈夫です。風邪ですから」
再度、外田有紀が吐いた息を顔に受けた。
「(んぐっ!)」
「あら!?」
外田有紀が何かに気付いたかのように見えたが、
「松坂さーん」
受付が呼ぶ声がした。
「はーい!」
外田有紀が、返事をした。
「母もまだ具合が悪くてこちらに連れて参りましたの」
と云って、受付に向った。
….と、
「ん?」
右肩に何かを感じ、そちらに顔を向けた。
「え!」
外田有紀の母親、先程、倒れ込んできた女が、眼を閉じ、頭をビエール・トンミー氏の肩に乗せてきていた。
「……ふうう……」
苦しそうになっている女の顔を見た。
「(そうだった、松坂慶子だ!)」
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿