「(あ、そうか!アイツ、まだ、ボクがあの娘に拘る男だと思っているんだな)」
と、ビーエル・トンミー氏は、自らの心に宿る下心を友人のエヴァンジェリスト氏が見透かしているのだろうと思い、それを否定するiMessageをiPhone 14 Proに打ち始めた。
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「いや、ワテは、あの店員がレジにいる時を狙うて、本を買ったりはしてへんで」
「へええ、そうじゃったん?」
「は?アンタ、ワシが、あの娘狙いで、と思うたんじゃないんか?」
「おお、今度は、『あの娘』かいね」
「うっ…そりゃ、男やないし、おばはんでもないさかい、『娘』や云うたまでや」
「綺麗な娘じゃったん?」
「え?あ、まあ、そりゃ、綺麗ではあったなあ」
「まあ、綺麗な娘狙いなところは、アンタらしいのお」
「あ、いや、んにゃ、まあ、そういうことやないんやが、じゃあ、アンタが、ワテに『アンタらしゅうもない』云うんは、ワテのどういうとこやねん?」
「ああ、アンタ程の知性の持ち主が、マヤカシにまんまと乗っとるところじゃ」
「マヤカシ?ワテが、どないなマヤカシに乗っとる云うんや?」
「アンタ、その『アーミッシュ』のエロ本に、『定価(本体2700円+税)』と書いてあったけえ、その『税』分を含めた金額を支払うたんじゃろ?」
「エロ本やあらへんて」
「アンタ、まだ読んでない本がエロ本じゃないかどうか、なんで分るん?」
「そりゃ、タイトルとか表紙とかでエロ本かどうか分るやないか」
「そりゃ、普通のエロ本じゃろ。アンタ・クラスになると、一般にはエロ本じゃないもんをエロ本にできるじゃろ」
「なんや、ワシ・クラスなんちゅう意味分らん云い方しよって」
「ワシには理解できん世界じゃが、世の中には、女性の臭いが染み付いた靴とか持ち物とかを有難がって、そん靴なんかにキスしたり、頬ずりしたり、臭いを嗅いだりする男がいるいうこと聞いたことあるけえ。アンタの場合、その本がそういう対象になっとるんじゃないん?」
「な、なに、他人を変態みたいに云いよって」
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「(アイツ、何故、ボクの変態行為を知っているんだ!?本に、この本に、ボクがキスし、頬ずりし、臭いを嗅いだところを盗撮でもしていたのか?)」
と、ビエール・トンミー氏は、何かを探すかのように、自分一人しかいないはずの部屋を見回した。
(続く)
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