2023年2月13日月曜日

チョコガム問題【非ハーバード流屁理屈論】(その32)

 


「(あ、いかん、いかん!)」


と、ビエール・トンミー氏は、我に返って、書店のレジの娘の匂いを嗅ぐべく、鼻を近付けていった本『アーミッシュの老いと終焉』をベッドサイドのテーブルに戻し、友人エヴァンジェリスト氏へのiMessageを続けた。



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「あ、そやそや、その詫間町ちゅうとこには『乙姫』もおるんか?ああ!せや、『乙姫』の話ししてたんや」

「おお、『乙姫』さんのことも忘れんとったげてえや」

「エエか、『浦島太郎』の『乙姫』は、『頼朝』と『北条政子』の娘の『乙姫』とは、関係あらへんのや。『乙姫』は多分やが、元々は、『弟姫』と書いとってやな、『弟』いう言葉から連想で蹴るように、それに、さっきも云うたようにやな、姉妹の姫の内、歳下の、つまり妹の方の姫ちゅう意味やったみたいなんや」




「え、ほうなん?ほいじゃったら、『竜宮城』には、お姉さんの『大姫』もおったん?」

「やから、『浦島太郎」は関係あらへん、云うてるやろ。けど、『竜宮城』に『大姫』がおったいうような話は聞いたことあらへん。『乙姫』には、歳下やさかい、若うて可愛い、いうような意味もできたみたいなんや」

「アンタ、言葉の歴史にも詳しいんじゃねえ。じゃけど、ちょっと話が長いで」

「アンサンに云われとうないで」

「ワシが云いたいんは、要するに、『北条政子』さんには、『よっくん』と『さっくん』に、『大姫』、『乙姫』いう子がおったんじゃけえ、『お母ちゃん』と呼ばれとったんじゃないん?、いうことよね」

「ああ、その問題やったな。でも、よう考えてみい、『鎌倉殿』の家で、『お父ちゃん』、『お母ちゃん』みたいな庶民的な呼び方するわけないやろ。もういっぺん云うけどやな、『政子』が普段は何と呼ばれていたかは不明なんや。『政子』ちゅう名前も、三代将軍『実朝』の後継者の将軍を朝廷に頼みに行く場面が大河ドラマであったんやけど(頼朝が亡くなって19年後やな)、その時に従三位の位を与えられるさかい名前が必要、ということで父の『時政』から一字とって政子にしたんやて。せやから、『頼朝』に『政子』という名前を出したら『誰やそれ?』と尋ねられるはずやで」

「ほいじゃったら、『頼朝』は、『政子』さんのこと、どう呼んどったん?」

「やから、不明や、ちゅうてるやろ」


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「(アイツ、ちょっとボケてきたのか?何回も同じことを訊いてきて。アイツももう一年余りで70歳になるからなあ)」


と、ビエール・トンミー氏は、iPhone 14 Proの画面の友人エヴァンジェリスト氏の惚けた顔が、作ったものではなく、痴呆から来るものではないか、と心配になってきた。



(続く)




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