「(『前田のクラッカー』のことは、よく覚えているけど、食べたことはあったんだったか…)」
と、ビエール・トンミー氏は、『前田のクラッカー』を食べたことあるのかという、友人エヴァンジェリスト氏の質問に、自問した。
『あたり前田のクラッカー!』と云う『てなもんや三度笠』の『あんかけの時次郎』こと『藤田まこと』のフレーズが、強く頭に残っており、なんとなく食べたことのあるような気がしていただけのような気もするのであった。
エヴァンジェリスト氏に、その記憶の混沌と曖昧さを突かれたような気がしたビエール・トンミー氏は、肯定はしきらず、話を逸らすような返事をiMessageで返した。
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「さあ、あるんやろな。『渡辺のジュースの素』は飲んどったで」
「ああ、エノケンの『♪渡辺のジュースの素です。もういっぱい!』じゃね」
「あの頃、ワテらが小学生やった頃は、ジュースは粉末ジュースくらいしかなかったさかいなあ」
「アンタ、『ソーダラップ』も飲んどったじゃろ?」
「なんや、それ?知らんのお」
「ええ!?本当に知らんのん?」
「ああ、『渡辺のジュースの素』しか知らんで」
「粉末のメロンソーダよおね。レモン、イチゴのんもあったみたいじゃが、ワシは、メロンのしか記憶にないけえ」
「ワテが知っとるんは、『渡辺のジュースの素』だけや」
「『♪そうだ村の村長さんがソーダ飲んで死んだあソーダ』いう歌、歌わんかったん?」
「何、唄うとるんや?」
「あれ!?聞こえた?iMessage、音声メッセージで送信しとらんのに、ワシが、唄うたんが聞こえたん?アンタ、やっぱりタダもんじゃないのお」
「またアホ抜かしおって。そないな妙な歌、聴いたことないで。勿論、唄うたこともない。ソーダ飲んで死ぬ、なんて、意味分らへん。どうせ、ガキどもの戯歌じゃろ」
「なんの、なんの、『阪田寛夫』の作詞なんじゃけえ」
「誰や、その『阪田寛夫』いうんは?」
「『アホの坂田』じゃないけえね」
「アンタこそ、アホやないか。『阪田』と『坂田』、字からして違うやないけ」
「おお、さすが慧眼じゃのお」
「慧眼でもなんでもエエが、『アホの坂田』も知らんで。でも、その説明、いらんで」
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「(こう注意しておかないと、『阪田寛夫』が誰か、という話から、『アホの坂田』は誰か、と、話はまたまた逸れていくんだ)ふーっ…」
と、ビエール・トンミー氏は、自らが取った予防策への満足と、とめどなく、とりとめなく展開していく友人の話への辟易とが混在した息を漏らした。
(続く)
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