「(アイツ、ボクに難癖をつけてきていたが、コッチがオゲレツ話に乗らなくなったら、馬脚を現してきたな。ただ、このくらいのことは、文学修士とはいえど、アイツだって知っていると思ってたけどなあ)」
と、思いながらも、ビエール・トンミー氏は、iPhone 14 Proを持つ右手で、フリック入力で、友人のエヴァンジェリスト氏へのiMessageを続けた。
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「アンタ、まあ修士やあ云うても、文学部やったさかい知らへんのやろ。商学部出身のワテが教えたろ」
「おお、天下の『ハンカチ大学』商学部出身にして『SNCF』の大家先生、頼んだでえ。教えたってえや」
「エエか、税金には、直接税と間接税とがあんねん」
「おお!リキラリアートを正面から打つける『長州力』と関節技の鬼『藤原喜明』みたいなもんかのお?」
「あんな、『長州力』は知らんこともないけど、その、なんや、『藤原喜明』は知らんで。『藤原鎌足』とか『不比等』、『道長』、それに、『奥州藤原氏』の『秀衡』やら『泰衡』なら知っとりはしてんのやけど」
「ああ、『カタマリ』かあ」
「はあ?また、何、云い出すねん?『鎌足』のことかいな?アンタ、『広島皆実高校』で、アンタのクラスの担任で日本史担当の『村木勉』先生の薫陶を受けたんやろに」
「おお、アンタ、やっぱり『広島皆実高校』のこと、よう覚えとるんじゃね」
「は…いや、そないな『カイジツ』高校のこと、知らんがな。そやけど、アンタがいつも云うてたさかい、なんとのお、覚えとったんや」
「ワシ、『村木勉』先生が出版された日本史の参考書を買わんかったんよ。『日本史要点暗記』いうような名前の本じゃった思うんじゃけど、先生がある日の授業で、教室にその参考書をようけえ持ってきて、『強制せんけど、買いたいもんは買え』云うたんよ。じゃけど、ワシ、買わんかったんよ」
「おお、アンタ、その頃から、ひねくれもんの、可愛げのない奴やったんやな」
「日本史は、成績は良かったんじゃが、好きな科目じゃなかったけえね。それに、『藤原鎌足』のことを『フジワラノ・カタマリ』云うたんは、『皆実』は『皆実』でも、『広島皆実高校』の時じゃのうて、『広島市立皆実小学校』の6年の時じゃけえ」
「そんな、『カイジツ』が、高校でも小学校でも、ワテ、どっちでもエエがな」
「6年10組で、担任の『今田英俊』先生から、『藤原鎌足』のことを習うたんじゃけど、ワシ、『藤原鎌足』のことを『フジワラノ・カタマリ』云うて、何回、注意されても、『カタマリ』、『カタマリ』云うて、クラスのみんなから笑われたんよ」
「アンタ、また、こうやって話を逸らしていくんやな。ワテは、『藤原鎌足』んことも『藤原道長』んことも話してんのやあらへんねん。勿論、関節技の『藤原ナントカ』のことも関係ないねん。アンタの恩師の思い出なんか興味あらへんのや」
「ああ、アンタは、『加来耕三』先生に日本史を学んどるけえ、『村木勉』先生にも『今田英俊』先生にも興味ないんよねえ」
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「(うっ。アイツ、いつも惚けたふりしながら、トンデモないところから弾を打ってくる。『加来耕三』のことを知っていたのか)」
と、ビエール・トンミー氏は、iPhone 14 Proに映った友人エヴァンジェリスト氏の戯けた顔を見ながら、警戒心を強めた。
(続く)
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