「(アイツは、オゲレツだが、ボクの知識を遠慮なく吐き出せるのは、アイツだけだからなあ)」
と、ビエール・トンミー氏は、友人エヴァンジェリスト氏の痴呆の気配を心配する。
「(家内は、一応、ボクの説明を聞いて、『へええ、そうなのお』と感心したそぶりは見せるが、内心では、『また始った』と思っている)」
と、若い頃程には、自分の話をまともに聞かなくなった妻のことを考えていると、エヴァンジェリスト氏から、その妻に関するメッセージが着信した。
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「アンタ、奥様からどう呼ばれとるん?」
「は?そないなこと、どうでもエエやろ」
「あ、そうじゃ。『アータ』じゃったのお」
「何、云うてんのや」
「『プロの旅人』で、いつもそう呼ばれとったん思い出したけえ。『あら、アータ、もうイッチャッタの?』とか云われとったじゃないねえ」
「ああ、ヤメレ、ヤメレ!やから、あの妄想系Blogのことなんか真に受けるんやないで、云うとるやろ。いや、そもそも、アレ書いてんのは…」
(参照:「MacBookProですか?」(その15=最終回))
「で、アンタは、奥様のことをどう呼んどるん?」
「名前は呼ばん。何となく気配で伝えるんや」
「『乙姫』じゃないん?」
「は?はあ?また何、云うてんねん?」
「奥様は、アンタより10歳も歳下なんじゃろ?」
「ああ、そうや」
「で、可愛んじゃろ?」
「あんな、10歳下いうても、もう58歳やで。オバハンや」
「でも、まだまだ可愛んじゃろ?奥様に、『今夜、風呂上がり久しぶりに君の部屋に行こうかと思ってね。バスローブを着て』と云うたりしとるじゃないねえ。知っとるんじゃけえ」
「エエ加減にせえよ!あの妄想系Blogのことなんか、もう口にすんやないで!」
(参照:バスローブの男[その102=最終回])
「これ、iMessageじゃけえ、口にしはしとらん。指じゃけえ。あ、なんかこの云い方、オゲレツじゃねえ」
「アホンダラ!」
「あ、そうか、久しぶりに奥様に部屋に行く、とは云うたもんの、アンタ、もう『原宿の凶器』ではなく、『昔、原宿にいた今は、小器』になっとるけえ、後悔したんじゃったよおのお」
「アンタな、口から手を突っ込んで奥歯をガタガタいわしたろか!」
「でも、まあ、要するに、奥様は、アンタより10歳下で可愛いけえ、『乙姫』いうことになるじゃないねえ」
「あ~、そういうこと云いたかったんか。話が長い、くどいで、今更やが」
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と、云いながらも、ビエール・トンミー氏は、会社のマーケティング部で初めて妻(というか、のちに妻となる女性)を見た時のことを思い出した。
「(可愛かったあ…そうだ。竜宮城に行き、初めて『乙姫』を見た浦島太郎も、そう思ったんだろうなあ)」
(続く)
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