「(あ、いかん、いかん。また、アイツのペースに嵌ってしまった)」
と、ビエール・トンミー氏は、頭を振って、『乙姫』話から我に返り、友人エヴァンジェリスト氏に対して、クレームのiMessageを打ち始めた。
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「エエか、『乙姫』のことなんかどうでもエエんや」
「でも、『乙姫』のことは、アンタが云い出したんじゃないねえ」
「それは、アンタが、『北条政子』の娘の『乙姫』と浦島太郎の『乙姫』のことを混同して、訳の分らんこと云うから、解説してやっただけや」
「ああ、要するに、アンタ、奥様のことは、『乙姫』とは呼んどらんと云いたいんじゃろ?」
「ん?それはそうやけど…なんで、『北条政子』、『乙姫』の話してたんやったか…?」
「ワシは、女房に対して、たまに『マイ・ハニー』と呼びかけるんじゃが、激怒されるで」
「当り前や」
「ほうかのお?」
「巫山戯とる」
「いやあ、『マイ・ハニー』じゃけえ、『マイ・ハニー』云うだけなんじゃがのお」
「アンタ、今晩、奥様に、『マイ・ハニー』云うてみんさいや。で、奥様の反応を教えてえや」
「気色悪うてよう云わんわ」
「試してえや」
「嫌じゃ」
「奥様に、『なにー!?』云われたら、ワシが云うてみい、云うたけえよ、と云うたらええ」
「アンタのことを出すと、益々ヤヤコしくなるで」
「え、そうなん?どうせ、ワシ、奥様に、変な人と思われとるんじゃろ?」
「あたり前田のクラッカー」
「また、『前田のクラッカー』なん。もう、『平参平」の話はしとらんのんよ」
「クドさの権化のアンタに、『またか』と云われとうないで」
「そういうたら、『前田のクラッカー』は、食べたことあるん?」
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「(うっ…アイツ、たまに急所を突いた質問をしてくる)」
と、ビエール・トンミー氏は、『広島皆実高校』の1年7ホームでの授業での友人エヴァンジェリスト氏の姿を思い出した。
「(頭が良かったことは確かだ)」
『牛田中学』では、誰にも負けることのない秀才であった自分が、初めて、『負けるかも』と思った相手であった。教師の質問に、躊躇なく、そして、的確に答えていたのだ。数学の問題も、黒板に、文字通り、チョークをスラスラと滑らせて解答するのであった。
(続く)
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