2012年12月31日月曜日

【歳末衝撃特報(その2)】怪人現る




ローラククイーン13世改めレディ・ウオーターメロンの手により、SUICAが、名古屋駅の自動改札機に入れられるという惨劇(参考:【歳末衝撃特報(その1)】スイカの惨劇)のあった翌日(2012年12月19日)、東京都西部の閑静な街でのことであった。

エヴァンジェリスト氏は見たのだ。

その朝、7時過ぎ、盛岡出張に向うべく自宅の賃貸マンションを出て、すぐ近くのバス停に向おうとしたところであった。

一人のオジサンがこちらに向い、歩いて来た。

エヴァンジェリスト氏はまたしても自身がオジサンであることを忘れ(参考:【衝撃】先輩になった日)、その男をオジサンと見た。

一見、普通のサラリーマンではあったが、しかし、それはただのオジサンではなかった。

左手に鞄を持ち、そして………

そして、右手に歯ブラシを持っていたのだ。

更に、その歯ブラシを口に入れ、口は泡立てられていたのである。

エヴァンジェリスト氏は思った。

「怪人だ!怪人ハミガキ男だ!」

何故、怪人は公道を歩きながら歯磨きをしていたのか?

まだ朝7時であり、会社に遅刻する時間でもあるまいが(近くに市役所があるので市の職員であったのかもしれない)、何らかの理由で、自宅で歯磨きをする時間がなくなってしまったのか?

外での歯磨きって、実は爽快感を味わえるのか?

歩きながらが特に爽快であるのか?

歯磨きをどこで歯ブラシに付けたのか?

歯磨きを実はポケットに忍ばせているのか?

どのようにして、怪人は口をゆすぐのか?

ひょっとして口をゆすぐなんてことはしないのか?

ゆすがず、泡は飲み込んでしまうのか?


……..疑問は尽きなかったが、エヴァンジェリスト氏はすれ違った怪人ハミガキ男を振り返ることもなく、バス停に向った。

エヴァンジェリスト氏は、前日に学んだのだ。

前日、名古屋駅の改札でエヴァンジェリスト氏は、レディ・ウオーターメロンに訊いたのである。

「(自動改札機に)どうしてSUICAを入れたの?」

それに対するレディ・ウオーターメロンの回答はこうであったのだ。

「入れませんか?」

そうなのだ。この世には、常識では測れないことが起き得るのだ。詮索しても仕方のないことちうものが世には存在するのだ。

「はああ!?入れないよぉ」
「いえ、入れますよ」
「今まで入れたことあるの?」
「ありませんけど」

怪人ハミガキ男に訊いても同じであったろう。

「(公道を歩きながら)どうして歯磨きをするんですか?」
「君はしないかね?」
「はああ!?しないですよぉ」
「いえ、するね」
「他の人がするのを見たことがあるんですか?」
「ないけど」

怪人ハミガキ男の姿にレディ・ウオーターメロンの不敵な微笑みが重なるのだ。





2012年12月24日月曜日

【歳末衝撃特報(1)】スイカの惨劇





「まさか、入れてないよね?」

そうだ、まさか、なのだ。間違っても、それはそこに入れるものではないのだ。

「ええ、入れましたけど」

エヴァンジェリスト氏の問いに元気に答えたのは、ローラククイーン13世であった。

「ええっ!?入れたの?何故?」
「何故?」
「だって……」

2012年12月18日の午後、名古屋駅の在来線の改札である。

大垣からの快速が名古屋に着き、東海道線のホームから改札まで降りたエヴァンジェリスト氏は、改札を出た。

….と、ピッコン、ピッコン、出たばかりの自動改札が警報を発し、赤いアラーム灯をしきりに点滅させていた

自分に続いて出てくるはずであったローラククイーン13世が、自動改札を前に首をひねっていた。


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「まさか、入れてないよね?」
「ええ、入れましたけど」
「ええっ!?入れたの?何故?」
「何故?」
「だって……」

「SUICAを入れたの?」
「ええ、入れました」
「どうして?」

SUICAを自動改札機の投入口に入れたというのだ。

「どうしてSUICAを入れるの?」
「はああ……….ああっ」

ようやく自分が何をしでかしたか気付いたようであった。

しかし、自動改札機が警報を発し、赤いアラーム灯をしきりに点滅させていることに焦るでもなく、悠然とした足取りで駅員室に向った。

駅員が来て、自動改札機を開け、SUICAは無事、救出された。投入口の近くでSUICAは止っていた。

SUICAもまさか、自分が自動改札機に投入されるとは思っていなかったであろう。割れる等、壊れてはおらず「命」に別状はなかったものの、きっと痛かったであろう。


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救出されたSUICAをそのまま使い、今度は投入口に入れることなく、自動改札にタッチして、ローラククイーン13世が出て来た。


「チャージ金額が不足しているのかと思った」
「いえ、そんなことはありません」
「どうしてSUICAを自動改札に入れたの?」
「入れませんか?」
「はああ!?入れないよぉ」
「いえ、入れますよ」
「今まで入れたことあるの?」
「ありませんけど」
「だろう。入れやしないよ」
入れますよ」
「初めてSUICAを使ったのならまだしもねえ」
「いえ、何度も使ってますよ」
「だったら、何故、入れたの?」
「入れますよ。他の人も入れますよ」
「いや、そんな人見たことないね」
「いえ、入れます」


ローラククイーン13世改め、レディ・ウオーターメロンの誕生である。





2012年12月18日火曜日

【疑惑の旅】鹿に答えるな(シーン12)






「鹿に答えるな」

京都から近鉄特急に乗り、「近鉄奈良」駅に着いて、エヴァンジェリスト氏が最初に発した言葉であった。




「鹿に話しかけられても答えては駄目だからな」

連れの若い女性にそう云ったと、奈良の特派員から聞いてピンと来た。

「鹿男あをによし」(万城目学の小説であり、テレビ化もされた)のパクリだなのだ。ああ、くだらない。


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京都の特派員から、二人の尾行を受継いだ奈良の特派員は、二人が奈良公園を右に見ながら、奈良県庁を過ぎ、「志津香」(公園店)に入るのを見た





一見、民家にも見えるが、釜めしの名店である

「エヴァンジェリスト氏、なかなかやらはりますな。ヒヒヒヒヒッ」

京都の特派員に負けずお下劣な特派員である。

「『志津香』は、女性好みの店ですねん。よう調べて来てはる。気に入られようと必死なんやなあ」

京都の特派員と違い、関西弁で報告を上げてくるのが気になる。




「志津香」(公園店)で、エヴァンジェリスト氏は、七種釜めし(1155円)、連れの若い女性は、かに釜めし(1050円)を食した。


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「志津香」(公園店)を出た二人は、左手に向い、少し行った先を左折した。




そこにも鹿が屯し、観光客を待っていた。

「鹿に追われて、キャッキャッ云いながら、いちゃつきたいんやろな」

確かに、そこでは尻を鹿に頭で突かれて「キャーーッ」と云いながら逃げ惑う女の子と、その女の子(カノジョ)を助けられず、「ヒエーッ」と云って自身も飛び去る男(カレシ)等がいた。

「いいか、鹿に話しかけられても答えではいかんぞ」

くどい!

ここでも、エヴァンジェリスト氏は玉木宏にでもなったつもりなのか、そう、連れの若い女性に云った。

連れの若い女性は、来年(2013年)NHKの大河ドラマ「八重の桜」で主演する『綾瀬はるか』よりも美人ではあった。

(ところで、「八重の桜」の主人公である新島八重を『綾瀬はるか』が演じることの不自然さにはここでは触れないでおく)



(続く)





2012年12月17日月曜日

【疑惑の旅】幸せと悲しみの三十三間堂(シーン11)







清水寺の参道を下り、再びタクシーに乗込み、その二人が向ったのは、美しいが他に見ることのない造形の寺院であった。




見れば分る。そう、三十三間堂(蓮華王院)である。世界で一番細長い木造建築と云われる寺院である。

「しかし、追跡する気が失せて来ました」

エヴァンジェリスト氏と連れの若い女性を追う京都の特派員は、何故、職を放棄するようなこと云い出したのか?


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「あの二人、どうして三十三間堂なんかに来たんでしょうか?」

特派員は疑問を呈して来た。

「清水寺は京都観光のメッカですから行くのはまあ当然なんですが、三十三間堂ってデートスポットではないですよ。とても美しく、珍しいお寺ですが、甘い雰囲気になれるところではありません」

しかし、私にはエヴァンジェリスト氏の意向が分った。

三十三間堂は確かにデートスポットではないが、甘い雰囲気と関係ないとはいえない場所である。

京都の特派員は知らないのか?三十三間堂では、結婚式を挙げることもできるのだ。

そうだ、ジュニア先生が今年(2012年)の5月に結婚式を挙げたのが、三十三間堂なのだ。

ジュニア先生とは、覚えておいでであろうか、そう、ミスター・シューベルト・ジュニアである。ミスター・シューベルトのご子息である。

昨年(2011年)、33歳の若さでダンジューロー市の市議会議員になられた方である。

(参考:【緊急特報】ジュニア先生、結婚!……..ミスター・シューベルト感涙。

ジュニア先生は、三十三間堂で仏式の結婚式を挙げられたのだ。



そして、ミスター・シューベルトは、父親として結婚式に参列する為、夫人と共に京都に旅行をし、礼服を着て三十三間堂に来たのだ

ミスター・シューベルトが夫人と共に、ダイワロイネットホテル京都四条烏丸に宿泊したのは、ジュニア先生の結婚式の為であったのだ。

そのことを京都の特派員は知らないのだ。

ジュニア先生の結婚式から3ヶ月後の8月30日に天使になられたミスター・シューベルトを偲びに三十三間堂に来たのだ、エヴァンジェリスト氏は。


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所在なげな連れの若い女性のことも構わず、三十三間堂の庭の砂利を踏みしめながら、そして、堂内に幾体も連なる仏像を惚けたように見ながら、エヴァンジェリスト氏は、その庭で新郎新婦を中心に家族勢揃いで撮られた写真を思い出していたのであろう。

ミスター・シューベルトからその写真を見せてもらっていたのだ。

やや強ばった表情ながら、幸せなミスター・シューベルトの不器用な笑顔を思い出すのであったろう。

そんなエヴァンジェリスト氏の感傷を知らぬ京都の特派員が、エヴァンジェリスト氏と連れの若い女性の次の行動をリポートして来た。




「あの二人、京都駅に行き、近鉄特急に乗りました」



(続く)





2012年12月16日日曜日

【疑惑の旅】「舞台」の下(シーン10)







清水寺の本堂で待ち受けていた「出世大黒天像」を見ながら、何やら物思いに耽っていた連れの若い女性のことは気にもせず、エヴァンジェリスト氏は歩を進め、「舞台」に立った。

そして、「舞台」から前方の山を見た




ここでも、「妙なことに二人にラブラブ感がないんですよ」と、京都の特派員は不満げに独りごちた。


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清水の「舞台」の写真は幾度も見たことがあるが、「舞台」からの景色の写真をエヴァンジェリスト氏は見たことがなかった。

今、初めて「舞台」からの景色を見たのだ。

そして、次にエヴァンジェリスト氏は、「下」を見た。「舞台」の下である。

「清水の舞台から飛び降りる」と云われるが、飛び降りた先はどうなっているのか、気になっていたようだ。

「舞台」の下は、こうなっていたのだ。




音羽の瀧(おとわのたき)等があるのだ。

中国人達に混じりながら、エヴァンジェリスト氏は「舞台」の下へと降りていった。

「舞台」の下に降りられるのだ。「舞台」に上がり、そのまま進むと、山道が続き、「舞台」の写真を撮るのに格好な場所がある。多くの「舞台」の写真が撮られたであろうスポットだ。




そのスポットを過ぎると、下り坂になり、回り込むようにして降り立ったところに、音羽の瀧があった




修学旅行生達でごった返していた。

そこでまた、エヴァンジェリスト氏の連れの若い女性は、また物思いに耽っているようであった。

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「彼女(エヴァンジェリスト氏の連れの若い女性)は、清水寺に何か思い出でもあるのか、と思いましたよ」

京都の特派員は思ったのだ。元カレ(エヴァンジェリスト氏の前の彼氏)と一緒に修学旅行でこの清水寺に来たことがあるのではないか、と。

しかし、次に二人が向ったところでは、今度はエヴァンジェリスト氏の方が物思いに耽ってしまったのである。




(続く)









2012年11月24日土曜日

【続・衝撃】舘ひろしになれない




「舘ひろしにはなれない。なれないんだあああ!」

エヴァンジェリスト氏が、悲痛な叫びを上げた。

あの傲岸不遜なエヴァンジェリスト氏とは思えぬ狼狽えぶりであった。

ソレも、エヴァンジェリスト氏には大変な衝撃であったのだ(参照:【衝撃】先輩になった日)。


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「あぁ、ボクにはウインクができない……できないんだああ!」

薄くなった髪をかきむしった。

「舘ひろしにはなれない。…….そんなことも分っていなかったなんて。ボクとしたことが……」

いや、エヴァンジェリスト氏が全くウインクできない訳ではない。

鏡に向ってウインクの練習をするエヴァンジェリスト氏を私は目撃した。それは、赤いタオルを首からさっと取り、リング上から観客席に投げ込む練習を鏡に向ってしていたアントニオ猪木を彷彿させるものであった(参照:赤いタオル)。

しかし、それはウインクと云えばウインクではあったが、「うぬぼれ営業」氏的に、どちらかと云えば(参照:【呉市音戸町波多見】どちらかといえばキリスト教。どちらかとえいば平家。(後編))、それは片頬がひきつらせた、といった方が正しいものであったろう。


舘さんは夏菜にウインクした。いや、舘さん扮する大先社長が,夏菜扮する純にウインクしたのだ。

舘さんが今、出演中のNHKの朝ドラ「純と愛」での中のことである。

舘さん(大先社長)が夏菜(純)にウインクするのを見た時、エヴァンジェリスト氏は気付いたのだ。

舘さんの代りに自分が「純と愛」に出演していたら、ウインクができないといけなかったのだ。

「ええっと、ウインクって、どうやるんだったけ?」

自問した。そして、気付いたのだ。自分はうまくウインクできないことに。舘さんのようにダンディにウインクすることができないことに気付いたのである。

鏡向って練習しても駄目であった。


「舘ひろしにはなれない」
「そんなことハナから分っていましたが」
「『舘さん、申し訳ない!』(参照:【石原プロ】舘さん、申し訳ない!と云った自分を恥じる」
「ウインク云々の問題ではないと思いますが……」
「舘ひろしにはなれない」
「いいいですか、アナタは元々、舘ひろしにはなれないし、なる必要なんかないんです

何故、私がエヴァンジェリスト氏にこんなことを云わなくてはいけないのか分らなかったが、取り乱したエヴァンジェリスト氏をほおっておく訳にはいかなかった。

「舘ひろしになる必要がない?」
「アナタは舘ひろしになる為に石原プロ入りしようとしていたんですか?」
「いや、そういう訳ではない…..」
「石原プロの窮状を救うのに、何もアナタが舘ひろしになる必要なんかないんです」
「そうか…..」
「それにアナタは舘ひろし程、ダンディではありません
「なにぃ」
「ダンディではないアナタが大先社長になってウインクしたとしても様になりません」
「まあな….」
「アナタは舘ひろし程、ダンディではありませんが、舘ひろしより2枚目です」
「まあ、それはそうなんだが」
「別の大先社長像っていうものがあってもいいでしょう」
「おお、そうだ!その通りだ。ユカワに云えばいいだけのことなんだ!」
「ユカワ?」
「遊川和彦だ」
「脚本家の遊川和彦ですね。『純と愛』の脚本も書いている、『家政婦のミタ』の遊川和彦ですね」
「アイツは1期下なんだ」
「はああ?」
「アイツも広島で育ったんだ。高校は、アイツは修道高校で、ワシとは学校は違ったが、1955年生れで1期下なんだ」
「だから、何なんですか!?」
「遊川和彦に、ワシにあった大先社長を描かせればいいだけのことだったんだ」

ああ、元気を取り戻したのはいいが、また傲岸不遜になってしまった。


「舘ひろしにはならないぞ!」




2012年11月10日土曜日

【衝撃】先輩になった日





「己を見る、ということを忘れていた。ボクとしたことが……

杉下右京的な反省の弁であった。

杉下右京の定年退職後のカイト君(甲斐亨)の「相棒」になるのではないかと噂されるエヴァンジェリスト氏が(参照:相棒後任決定!?】成宮寛貴の新相棒?杉下右京退職?)、いつもは傲岸不遜な氏には珍しく反省をしたのである。

それは、エヴァンジェリスト氏には大変な衝撃であったのだ。


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2012年9月25日、コンフォートホテル佐賀である。

午前6:27になり、エヴァンジェリスト氏は9階の部屋を出た。1階の朝食会場に行くのである。

エレベーターに乗った。一人である。

「ふうーっ」

特に意味もなく、ため息をついた。

…….と、6階でエレベーターが止った。オジサンが一人乗って来た。エヴァンジェリスト氏は、オジサンにスペースを与える為に、エレベーター内での位置を少しくずらした。

オジサンは会釈した。エヴァンジェリスト氏も会釈で返した。礼儀正しいオジサンである。

エレベーターが1階に着いた。エヴァンジェリスト氏が、右手の掌を上にして斜め前に滑らしながら、無言ながら「どうぞ」とオジサンに先を譲ろうとした。

…….と、その時である。そう、その時であったのだ。オジサンも右手の掌を上にして斜め前に滑らしながら、そして、声を出して云ったのだ。

「センパイどうぞ」

愕然とした。エヴァンジェリスト氏は戸惑いながら、オジサンに云われるがまま、先にエレベーターを降りた。

「センパイどうぞ」

頭の中で、オジサンの声がリフレインした。

「センパイどうぞ」

確かにオジサンは云ったのだ。「センパイどうぞ」と。

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その後の朝食のことは、覚えていない。

「己を見る、ということを忘れていた。ボクとしたことが……」

そうなのだ。自分はオジサンよりオジサンなのだ。エヴァンジェリスト氏は思い知らされたのだ。

確かにオジサンは立派にオジサンであった。しかし、それ以上に、エヴァンジェリスト氏はオジサンなのであった。

オジサンは40歳代と見えた。多分、40歳代後半である。而して、エヴァンジェリスト氏は58歳である。立派にオジサンよりオジサンなのであった。