2017年9月30日土曜日

【ゲス児童】『くしゃれ緑』な『ウンギリギッキ』(その2)[M-Files No.5 ]



幼き日のエヴァンジェリスト氏(エヴァンジェリスト君)が通う『広島市立皆実小学校』は、児童数がとてもとても多い超マンモス校であった。

当時、各学年9クラスあったが、1966年、児童数が更に増え、6年は1クラス増えた。

そのせいで、6年になる時にクラス替えがあり、エヴァンジェリスト君は、5年4組からに6年10組になった。

悲しかった。6年10組になった時には、悲しかった。それは........





1965年春である。そう、6年になる際にクラス替えのあった前年である。

翠町公園の横を、赤いランドセルを背負った女子児童が歩いていた。

スキップをしている訳ではないのに、フワフワと浮くような軽やかな足取りであった。

ランドセルの横には、青い袋に入った縦笛がアンテナのように刺さっていた。



その赤いランドセルの女子児童の後方20mくらいのところを、整った顔立ちながら、表情に少し陰のある男の子(児童)が、前方を窺いながら歩いていた。

小学校高学年と見えるその男の子の顔をビエール・トンミー氏が見たら、云ったであろう。

「このゲス野郎!君は子どもの頃からゲスだったのか」

そう、男の子は、エヴァンジェリスト君であった。5年生になったばかりのエヴァンジェリスト君であった。


(続く)



【ゲス児童】『くしゃれ緑』な『ウンギリギッキ』(その1)[M-Files No.5 ]




1966年の頃、1クラス40人余りの児童がいた。

幼き日のエヴァンジェリスト氏が通う『広島市立皆実小学校』である。

そして、各学年はほぼ9クラスあったので、2000名余りの児童が、『広島市立皆実小学校』にはいたのだ(今は、700人程度のようなので、3倍くらいの児童数であったのだ)。




尤も、1966年は、6年は10クラスであった。前年は(エヴァンジェリスト君が5年生の時には)、9クラスであったが、6年生になる時に児童が増えたのであろう、1クラス増えたのだ。

そのせいで、6年になる時にクラス替えがあった。通常は、5年から6年はクラスは『持ち上がり』で、クラス替えはなかったのに、異例のクラス替えとなった。

エヴァンジェリスト君は、5年4組からに6年10組になった。

悲しかった。6年10組になった時には、悲しかった。それは........

.........ところで、エヴァンジェリスト君の6年10組の教室の横は、体育用具準備室であった。

授業と授業との間の休憩時間になると、その体育用具準備室から、妙な声が漏れてきていた。

「ウンギリギッキ、ウンギリギッキ」




(続く)



2017年9月28日木曜日

劣化?【『引退』の理由】(その4=最終回)




「手術?ビエール・トンミー氏はどこか具合が悪かったのですか?」

週刊『ヘンタイ』の編集長ブロークン・レッグが、エヴァンジェリスト氏に訊いた。

「まあ、悪いところがあったとすれば、美しすぎた、というところであろう」
「ムカつく!」
「ハンサムでもイケメンでもない君には判らんだろうな。ワシには、アイツの気持ちが痛い程、分かる。まあ、同病相憐れむ、というところだ」
「ああ、貴方も面倒臭い人ですね。だから何なんです、手術って?ビエール・トンミーは、何の手術をしたのですか?」
「ふふ。知りたいか?....ふふ」




「何の手術なのですか?」
「整形手術だ!」
「ええ?整形手術?........意味が分りません。整形手術して、どうして今のような『ヒヒジジイ』になるのですか?」
「ハハ!そうなんだよ、『ヒヒジジイ』になるような整形手術をしたのだ」
「えっ!ま、まさか!」
「ああ、まさか、だ。ワシもアイツがそこまで自分の美貌に苦しんでいたとは思っていなかった」
「美しくなる為ではなく、美しくなくなる為の整形手術....」
「アイツは長年、苦しみ続けたのだ。『自由ヶ丘のアラン・ドロン』『原宿のアラン・ドロン』として、女性にモテモテだっただけではないのだ。『アラン・ドロン』でありながら、アイツの股間は『凶器』だったのだ
『自由ヶ丘の凶器』『原宿の凶器』ですね」
「端正な容姿の裏には、『野獣』が潜んでいたのだ」
『喰いたい放題』だったのでしょうね。それなのに何故….」
「アイツは、『野獣』ではあったが、妻をこよなく愛する『野獣』なのだ。しかし、妻はアイツのことを紳士としか思っていない。アイツは、『野獣』ぶりを発揮しようと思えばいつでもできた。アイツ程の美貌があれば、そう、君の云う通り、『喰いたい放題』だった」
「じゃあ、『喰え』ばよかったではないですか」
「ああ、君は何も分っていない。アイツは、『喰い』に行かずとも、『餌』の方からアイツに寄って来た。何しろ、自由ヶ丘のアラン・ドロン』『原宿のアラン・ドロン』だからな」
「私なら、遠慮なく『イタダキ』ます」
「このゲス野郎め。アイツは、『変態』ではあるが、『ゲス』ではない。だが、股間の『野獣』は蠢くのだ。そこで、アイツは、『野獣』が目覚めることのないようにしようと考えた訳だ。妻を愛しているからだ」
「だからといって、美しくなくなる為の整形手術をしなくともいいでしょうに」
「君は甘いなあ。他人を自分の常識だけで判断してはいかん」
「はあ?」
「某国の首相は、『共謀罪』という名称の法律を作り、批判を浴びた。しかし、某国の国民は、事象の表層しか見ていないのかもしれないのだ。某国の首相は、自身が作った『共謀罪』で合法的に自分自身が盗聴され、自分の悪だくみを当局に知られ、逮捕されることを画策しているのかもしれないのだ
「貴方、意味不明なことを仰る」
「猪木さん的な深謀遠慮なのかもしれんのだ。猪木さんは、第1回IWGPリーグ戦の決勝で、ハルク・ホーガンに、舌出しKOされ、負けたのだ。それは、猪木さん自身が、自分の右腕の坂口征二さんや他の新日本プロレスの誰にも知らせず、相手選手のハルク・ホーガンにも知らせず仕組んだ自作自演だとも云われている。それと同じかもしれないのだ」
「猪木という人は......」
某国の首相も、『共謀罪』というものの恐ろしさを身をもって愚かな国民に知らせる為に、『共謀罪』を成立させたのかもしれないのだ。やがて自分自身が逮捕されるところを見せることによってな
「まさか!」
「ふふ。世の中には、その『まさか』なことがあるのだよ。普通、整形手術は、美しくなる為にする。しかし、ビエールは、美しくなくなる為にしたのだ。猪木さんが、自分が提唱し、創ったリーグ戦でわざと負けてみせたと云われるのと同じようにな。負けるはずのない戦いで自分が負けてみせることにより、プロレスを『予定調和』なものと思っている人々の既成概念を打ち砕いたのだ。だから、猪木さんのプロレスは面白かったのだ。ビエール・トンミーは、猪木さん的『在り方』を実践したのだ


「ビエール・トンミー氏のことは、ただの『変態』だと思っていましたが、貴方のお陰で、あの人の真の姿が分りました。スクープ記事のタイトルも決めました。

<劣化?【『引退』の理由…..『変態』界の巨匠>

とします。パラドックス的タイトルです。『劣化』するからではなく、『劣化』しないから『引退』したということを読者は、週刊『ヘンタイ』を買って本文を読んで初めて知るのです」
「好きにするがいいさ。ワシは、君たちマスコミが『真実』を伝えることを望むだけだ。ハハハハハ!」

そう高笑ったエヴァンジェリスト氏は、編集長ブロークン・レッグが去った後、友にiMessageを入れた。

『君の為にソウイウコトにしておいた。礼は不要だ。友人だからな』


(おしまい.....多分)







2017年9月27日水曜日

劣化?【『引退』の理由】(その3)




「ふふ。貴方は甘い人だ。我が国の国民を理解していない。我々は、国民の愚かさにつけ込んで商売をするのです」

週刊『ヘンタイ』の編集長ブロークン・レッグが、エヴァンジェリスト氏に嘯いた。

「ひどい奴だなあ」
「愚かな国民がいけないのです。頭のいいやつがコントロールするのです」
「……..ふふ……..ふふ……….」
「なんです?どうしたのです?気持ち悪い笑い方は止めて頂きたい」
「君は何も分かちゃいない。君は、頭がいいつもりかもしれないが、コントロールされているのは、君の方だ」
「ええ、なんですって!そんなことはない!」
「ふふ。では、これを見よ!」




エヴァンジェリスト氏は、今度は彼の方から、編集長ブロークン・レッグに1枚の写真を見せた。




それは、編集長ブロークン・レッグがエヴァンジェリスト氏に見せた写真に酷似していた。

酷似していたが、どこか微妙に異なっていた。

「こ、こ、これは……」
「そうだ。老いたビエール・トンミーの姿だ」
「ええ!?このイケメン紳士が!?」
「顔をよく見るがいい」
「お、お、面影が……ビエール・トンミー氏の面影が」
「そうだ。これは、老いたビエール・トンミーなのだ。いや、これが、真の老いたビエール・トンミーなのだ」
「しかし、今は、ただの『ヒヒジジイ』です」
「そうなのだ。アイツは疲れたのだ。ハンサムであり続けることに疲れたのだ。だから、アイツは踏み切った」
「踏み切った?何に?」
手術だ
「手術?ビエール・トンミー氏はどこか具合が悪かったのですか?」
「まあ、悪いところがあったとすれば、美しすぎた、というところであろう」
「ムカつく!」
「ハンサムでもイケメンでもない君には判らんだろうな。ワシには、アイツの気持ちが痛い程、分かる。まあ、同病相憐れむ、というところだ」
「ああ、貴方も面倒臭い人ですね。だから何なんです、手術って?ビエール・トンミーは、何の手術をしたのですか?」
「ふふ。知りたいか?....ふふ」


(続く)








2017年9月26日火曜日

劣化?【『引退』の理由】(その2)






「週刊『ヘンタイ』?聞いたことないなあ」

編集長ブロークン・レッグが、エヴァンジェリスト氏の前にいた。

「週刊チンタイなら聞いたことがあるがなあ」
「まあ、そんなことはどうでもいいので、お教え下さい。私は、ウラを取りに来たのです」
ウラをとる?ワシは、後ろからスルことはあっても、後ろからサレルのは嫌だぞ」



「はあ?貴方も『ヘンタイ』なんですか?」
「なにーい!ワシをビエールと一緒にするな!」
「ええ、そのビエールのことなんです。貴方のお友達のビエール・トンミー氏のことなんです」
「んふ?ビエールのこと?あの『ヘンタイ』の何を知りたいのだ?」
「そう、あの『ヘンタイ』のことです。今は、『ヘンタイ』という言葉が相応しい『ヒヒジジイ』な容貌に成り果てていますが、かつては相当なハンサムであったそうですが、間違いありませんか?」
「ああ、それは間違いない」
「この写真に写っている美貌の青年が、まさか若き日のビエール・トンミー氏とは思いににくいのですが、この青年は本当にビエール・トンミー氏ですか?」

編集長ブロークン・レッグは、エヴァンジェリスト氏に1枚の写真を見せた。彼が、ビエール・トンミー氏に見せたあの写真である。

「おお、懐かしいのお。これは、そう確かにアイツだ。『自由が丘のアラン・ドロン』と呼ばれていた頃ではないかなあ」
「その後、『原宿のアラン・ドロン』と呼ばれるようになったようです」
「夜には、『原宿の凶器』と恐れられていたというか、女性たちからは、『期待』されていたようだがな」
「しかし、その『原宿のアラン・ドロン』『原宿の凶器』が今や見る影もありません。そこで、私は判ったのです。ビエール・トンミー氏が、『引退』した理由が」
「ビエールが、『引退』?」
「ええ、同級生の貴方が未だに会社にしがみついて働いているというのに、4年前(2013年)、ビエール・トンミー氏は、59歳で完全リタイア、つまり、会社を『引退』しました」
「羨ましい奴だ」
「それは、ビエール・トンミー氏の容貌が『劣化』してきたからだったんです。かつては相当なハンサムで、何人もの女性を哭かせてきた自らの美貌が無残になるのに耐えかねたのです」
「いや、それは…..」
「ええ、もう判ったのです。貴方の証言で、この写真のハンサム・ボーイが、若き日のビエール・トンミー氏であることが確認できました。後は、見るも無残な彼の今の姿と比較することで、読者も納得するでしょう。ビエール・トンミー氏が『引退』したのは、安室奈美恵同様、『劣化』を嫌ったからだと」
「いや、君は間違っている。どうもマスコミは、不幸な出来事を報道することや、人を貶めることが好きなようだ」
「読者もそれを望んでいるのです。我が国の民は愚かなのです。我々マスコミは、愚かな国民に彼らが望むものを提供しているだけなのです。世論操作も簡単です。大規模な災害があり、自衛隊が救助活動に大いに貢献した後に、『自衛隊は必要か?』と訊くと、『津波や地震があった時に、救助したりしてくれるから必要』と答えるのが、国民なのです」
「必要なのは、大規模災害で救護活動をできる組織が必要なのであり、それが自衛隊であるというのは論理的ではない」
「ふふ。貴方は甘い人だ。我が国の国民を理解していない。我々は、国民の愚かさにつけ込んで商売をするのです」
「ひどい奴だなあ」
「愚かな国民がいけないのです。頭のいいやつがコントロールするのです」
「……..ふふ……..ふふ……….」
「なんです?どうしたのです?気持ち悪い笑い方は止めて頂きたい」
「君は何も分かちゃいない。君は、頭がいいつもりかもしれないが、コントロールされているのは、君の方だ」
「ええ、なんですって!そんなことはない!」
「ふふ。では、これを見よ!」


(続く)





2017年9月25日月曜日

劣化?【『引退』の理由】(その1)



「スクープだ!」

編集長ブロークン・レッグは、1枚の写真を手にし、叫んだ。

「相当なイケメンだ。いや、当時は、ハンサムと云っていたのか」

それは、読者からの投稿写真であった。

「アイツが何故、59歳で完全リタイア、つまり、会社を『引退』したのか、不思議だったのだ。そういうことだったのか……..アイツの同級生のエヴァンジェリストは未だに会社にしがみついて働いているというのに、4年前(2013年)、アイツは早々に『引退』したのだ」

編集長は、ビエール・トンミー氏を直撃した。

「貴方が、59歳で仕事を完全リタイア、つまり『引退』をしたのも、安室奈美恵のように『劣化』を恐れたからですか?」

いつものパジャマ姿で散歩を終え、自宅に入ろうとしたところを突然、インタビューを受け、ビエール・トンミー氏は狼狽えた。

「な、なんだね、君は?...はっ、週刊『ヘンタイ』か。ブロークン・レッグとかいったな」
「このイケメンは、いや、ハンサム・ボーイは、貴方ですね?」



編集長ブロークン・レッグは、1枚の写真を見せながら訊いた。

「君は、この写真を一体どこで入手したのか?」
「貴方は、この写真が示す通り、相当なハンサムであった。しかし、寄る年波には勝てず、貴方の容貌が『劣化』してきたからですね、『引退』されたのは?」
「なにー!」
「それまで、何人もの女性を哭かせてきた美貌が無残になるのに耐えかねたのですね?」
「五月蝿い!」



「ほら、その怒った姿、かつて『原宿のアランドロン』と呼ばれた男と同一人物とは、とても思えません」
「黙らっしゃい!........ノー・コメントだ!事務所を通すんだ!」

そう云うと、ビエール・トンミー氏は自宅に駆け込んだ。

「まあ、いいさ。独占スクープで、あの写真(イケメン写真)を載せてやる。今の哀れな姿と並べてな。ふふふ」

編集長ブロークン・レッグは、北叟笑んだ。

しかし、彼は知らなかったのだ、ビエール・トンミー氏の『引退』の真の理由を。


(つづく)



2017年9月24日日曜日

RE:見てはいけないもの(Special Edition)[M-Files No.1 ] from Bière Tonmie



ビエール・トンミー氏からエヴァンジェリスト氏への返信である。




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There are no such rules in Kyushu's "Benjyo".

I am born in Fukuoka so I will say no "machigai".

"Obadan" and "ojidan " both forgot to lock  "magi”.


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Oops…….I made spelling mistakes.

We know the word “dent_eyes_phallus”. It is the word for men.

My eyesight is failing. I need to take care of phallus. If my phallus also fail, so many ladies will cry hysterically.



Here is a corrected version.

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There are no such rules in Kyushu's "Benjyo".

I am born in Fukuoka so I will say no "machigai".

"Obasan" and "ojisan " both forgot to lock  “kagi”.

==================


(The End)



2017年9月23日土曜日

見てはいけないもの(Special Edition)[M-Files No.1 ]



エヴァンジェリスト氏が、ビエール・トンミー氏に宛てた親書が発見された。以下のものである。


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Oh I just now remember a very very “daijina” issue on my business trip in 1995. 

I got an JR limited express “Nichirin” for going from Oita to Miyazaki. 

Before getting “Nichirin” , at the Oita station I wanted to go to “benjyo”.

But unfortunately I could not find it. However, I thought I could go to “benjyo” in  “Nichirin” . Yes, it was not a “mondai” because I am not “kodomo” and I can do “gaman”.
     
On the train I went to “benjyo”, and confirmed "aki" sign on its door. 

I opened it, and found, <>, “osiri” of “obaasan” “shaganding” in the “benjyo” ! Oh, My Paper(“Kami” ?) !!!!!
     
15 minutes later, I tried to go to “benjyo” again. 

Surely I confirmed "aki" sign on its door and opened it. 

<> again ! 

This time I saw around 45 years old “ojisan” doing standing “osikko”.
     
In the Kyushu, “daremo” does not lock the key of “benjyo” door ? 

It's a Kyushu rule ? 

If you know “nanika” on this issue, please inform me.
  
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(The End)





見てはいけないもの(その16 =「最終回」)[M-Files No.1 ]




トイレの扉には、『空き』のサインが出ていた。

それを確認すると、エヴァンジェリスト氏は、扉の取っ手を取り、躊躇なくサッと横に引いた。

「…っ、は….っ…….」

エヴァンジェリスト氏は、その場に立ち竦んだ。

1995年のことであった……………





『オジサン』がいた!

トイレの中には…….そこには、あのお婆さんはもういなかったが、その代りに、と云おうか、『オジサン』が立っていた。

『オジサン』は40歳台半ばくらいと見えた。

その時、41歳であったエヴァンジェリスト氏が、自分とそう年齢差のない男を『オジサン』と云っていいものかとは思うが、その男は、紛うことなく、『お婆さん』でも『オバサン』でもなかった。『青年』でも『少年』でも『乳幼児』でもなかった。

であれば、『オジサン』と云うしかないのである。

その『オジサン』が、エヴァンジェリスト氏が扉を開けたトイレの中に立っていたのだ。

エヴァンジェリスト氏は、またもや見てはいけないものを見てしまったのだ。

そこには、お婆さんがお尻をむき出しにしてしゃがんではいなかったが、『オジサン』が、両手を股間で揃え、腰を前に突き出すようにしていた。

そして、エヴァンジェリスト氏がトイレの扉を開けると、前方下に向けていた視線を、扉の開く音のした左斜め後方にキッと向けた。

『オジサン』とエヴァンジェリスト氏との視線がぶつかった。

「なんだよお!」



『オジサン』の目は、そう云ってきていた。

「バシーン!」

エヴァンジェリスト氏の手は、反射的に扉を閉め、『オジサン』の刺すような視線は、扉の向こうに消えた。

しかし、エヴァンジェリスト氏の瞼には、こちらを批判する両眼の残像が残っていた。

「こっちの方だ!『なんだよお』と云いたいのは」

と思いながら、閉めた扉の取っ手の上部を見た。そこには、『空き』という文字があった。

「まただ!そうだ!ボクは、トイレが『空き』であったから、扉を開けたんだ」

『オジサン』も、お婆さんと同じく、トイレの扉の鍵をかけていなかったのだ。

「ボクは、『オジサン』のオシッコ姿を見ようとしたのではないんだ」

エヴァンジェリスト氏は、瞼に残る『オジサン』の視線に必死で反論した。

反論しながら、エヴァンジェリスト氏は自分の席に戻って行った。

「なめていた………..ボクは『九州』をなめていた」

席に戻ったエヴァンジェリスト氏は、窓外に『九州』ののどかな田園風景に目をやりながら、呟いていた。

「『九州』では、トイレに入っても鍵を閉めないのか!?それが『九州』のルールなのか?………..ボクは『九州』をなめていた。ボクは一体いつになったらオシッコを出せるんだ!?」


(おしまい)



2017年9月22日金曜日

見てはいけないもの(その15 )[M-Files No.1 ]



エヴァンジェリスト氏は、見てはいけないものを見てしまった。

1995年である。

大分駅から宮崎に行く特急『にちりん』のトイレの扉を開けたエヴァンジェリスト氏は、そこに『見てはいけないもの』を見てしまった。

トイレの中にしゃがみ、お尻をむき出しにして用を足しているお婆さんを見てしまったのだ。

「お婆さんは、ボクを覗き魔と思ったかもしれない」

と思うと、自分が犯罪者になったような気がし、不安に襲われたが、

「そうだ。トイレの扉に鍵をかけていなかったお婆さんの方が悪いのだ!そのせいで、ボクは見たくもないものを見る羽目になったのだ。犠牲者はボクの方なのだ。お婆さんがボクを見つけ、何か云ってきたら、そう言い返してやる。鉄道警察だって怖くないぞ」

と思うようになり、段々、落ち着きを取り戻してくると、股間は、ますますこう思うようになった。

「オシッコをしたい」

トイレに行きたかった。だが、まだあのお婆さんがトイレの中でしゃがんでいるかもしれない

そう思うと、なかなかトイレに向かう勇気が湧いてこなかった。

しかし、股間の方も限界が近付いて来ていた。

「オシッコをしたい」





エヴァンジェリスト氏は、勇気を奮い起こした。トイレに行くことにしたのだ。

お婆さんのお尻を見てから、15分が経っていた。さすがにお婆さんはもうトイレにいないであろうと思った。

股間も脅して来ていた。

「早くしろ!そうしないと、漏らすぞ!いいのか、あの頃のように……」



ゾッとした。『あの頃のように』になりたくはなかった。

もう30年以上経過しているので、自分以外の誰も知らないと思っていたが、股間は知っていたのだ。それはそうだろう。『股間』は、エヴァンジェリスト氏『自身』であるからだ。

「ごめんだ!もう『あの頃』のようにはなりたくはない」

そう思いながら、席を立ち、デッキを通り、再び、トイレの前に立った。

トイレの扉には、『空き』のサインが出ていた。

それを確認すると、エヴァンジェリスト氏は、扉の取っ手を取り、躊躇なくサッと横に引いた。

「…っ、は….っ…….」

エヴァンジェリスト氏は、その場に立ち竦んだのであった。



(続く)