2019年4月30日火曜日

住込み浪人[その72]







「いいかい、君は、確かにこれまでテレビに出たことはないかもしれない。でもさ、今度、『テイトー王』に出たら、ほら、もうテレビに出たことになるじゃないか」

OK牧場大学の校庭で、住込み浪人』ビエール・トンミー青年にマイクをくっつけたまま、EBSテレビのディレクターは、吠えるように説明をした。

「いや、その理屈は、ちょっと強引では…..」
「ああ、君もまだ若いなあ。まあ、君の頭脳は、相当に優秀なようだが、社会人経験はまだないからなあ」
「そういう問題ではないのでは…..」
「いいかい、トンミー君。教えてあげよう。世の中の会社ではね。誰でもいいから、営業部門に配属させれば、その瞬間からその者はもう、『営業』なんだよ」
「ええ!?商品知識も何もなくても?」
「ああ、そういうもんさ。まあ、少なくとも1ヶ月も経てば、何の教育も受けていなくとも、上司から『もう独り立ちできるだろ?』と云われるのさ」


「そんなバカな!」
「そんなバカなことが横行しているのが、今のこの国の現状なんだよ」
「でも、ボクは違う!ボクは知っている、自分が芸能人ではないことを。『己を見る』ことをしないと、エヴァの奴に叱られる」
「エヴァの奴?....ああ、まあいいさ。とにかく、君は、『テイトー王』の出た瞬間から芸能人さ。何も臆することはない」
「いや、臆する、臆さない、という問題ではなくって….」
「それに、君は、ただ営業部門に配属されたから『営業』になる輩とは、違うのさ」
「はあ?」


(続く)


2019年4月29日月曜日

住込み浪人[その71]







「トンミー君、君、ウチの『テイトー王』って番組、知ってるよね?」

OK牧場大学の校庭で、住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、EBSテレビのディレクターにマイクを突きつけられ、迫られていた。カメラも回っているようであった。

「あ、まあ、知らなくはありませんが……」

自身に向けられたハンディ・カメラの赤いランプを気にしながら、やや曖昧に答えた。

「君さあ、『テイトー王』に出ようよ!」

と云うと、EBSテレビのディレクターは、親しげに住込み浪人』ビエール・トンミー青年の肩をポンと叩いた。



「はあ?」

全く予期せぬ展開に、住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、下顎を下げるように口を開けていた。

「ウチのプロデューサーからのご指名なんだよ」

EBSテレビのディレクターは、満面に笑みを浮かべていた。

「だけど、ボクは、『テイトー』の学生じゃないし」
「ああ、勿論、『テイトー』チームじゃないさ」
「へ?芸能人チーム?」
「そうとも!」
「いや、でも、ボクは芸能人じゃないし…..」
「いいんだよ、君は、芸能人さ」
「だって、俳優でも芸人でもないし…..」
「あああ、君らしくもない、そんな固定観念に縛られて!」
「テレビにだって出たことないし….」
「ふん!」

と、EBSテレビのディレクターは、手にしていたマイクを住込み浪人』ビエール・トンミー青年の鼻の頭に押し付けた。


(続く)


2019年4月28日日曜日

住込み浪人[その70]







「EBSテレビです」

OK牧場大学の校庭で、女子学生たちの群れを掻き分け、住込み浪人』ビエール・トンミー青年に迫った男が名乗った。EBSテレビのディレクターのようであった。

「(EBS?ああ、江戸放送か)」

住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、まだ眼を閉じていた。光を当てられていたからだ。

「あのお、眩しいんですがあ」
「ああ、ライト下げろ」

撮影用のライトが当てられていたのだ。

「君が、住込み浪人』のビエール・トンミー君だね?」
「ええ….」

と答えた時、住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、ハンディ・カメラが自分に向けられていることを知った。



「凄いじゃないか、『テイトー』に合格したのに辞退するなんて!」
「(凄いかなあ?ただ、『テイトー』に入学する気がなかっただけだが….)」
「いや、そこが凄いんだよ。入学する気のない『テイトー』を受験し、見事、合格はしたものの、初志貫徹、入学辞退するなんてね」
「(なんだ、こいつ。他人の心が読めるのか?)」
「今までどうして隠していたんだ!?」
「(いや、別に隠していた訳ではないが…….)」
「まあ、それはいいや。君にオファーがあるんだ」


(続く)



2019年4月27日土曜日

住込み浪人[その69]







「ううーっ!」

OK牧場大学の校庭で、女子学生たちの渦に竹箒を持ったまま回転していた住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、閃光に思わず、眼を閉じ、手で眼を隠すようにすると、渦の中に身を投げ出すように倒れ込んで行った。



「キャーッ!ビエさまあ!」
「何、何、何いい!」

女子学生たちは、パニックとなった。

「どいて!どいて!」

女子学生たちの群れをかき分けてくる一団があった。

「ピカーッ!」

女子学生たちの眼も眩んだ。

「君たちに用はない!用があるのは、そこの『住込み浪人』君だ!」

男の声に、女子学生たちの群れに道ができた。

「な、な、なんだ?」

女子学生たちに身を支えられたまま、住込み浪人』ビエール・トンミー青年が、男の声に反応した。

「君だね、『テイトー』に合格したのに辞退して、わざと二浪をしているのは!?それも『住込み浪人』に身を窶して」

住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、眉間に皺を寄せた。『テイトー』に合格したのに辞退したのは事実だが、わざと二浪をしている訳ではないが、とは思った。


(続く)




2019年4月26日金曜日

住込み浪人[その68]







「ええ-っ!」

OK牧場大学の校庭で、女子学生たちの焦がれるような視線を浴びていた住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、女子学生の一人の突進に後ずさりしたものの、後ろからにも別の突進を感じたのだ。

「うおーっ!」

いや、前方と後方からだけではなかった。視線を浴びせてきていた女子学生が皆、突進してきたのだ。

「ビエさまあ!」
「『テイトー』を棄てるなんて、ステキー!」

住込み浪人』ビエール・トンミー青年はもう、女子学生たちの渦に竹箒を持ったまま回転していた。

「ああ、これが噂のパジャマねえ!」
「うーん、なんて素敵な臭さかしらあ!」
「イル・トンヴィのパジャマですって!?」

パジャマは、コニクロで買った980円の物であったが、いつの間にか、ブランド物と勘違いされていた。

「トンミーさまあ、サインしてえ!」

一人の女子学生が、色紙を差し出した。



「まあ、私もよお」
「私が先だわ!」

住込み浪人』ビエール・トンミー青年はまだ、女子学生たちの渦に竹箒を持ったまま回転し続け、眼も回していたが、女子学生たちが放つ芳香に、頭は完全に平衡感覚を失い、股間を制御することもできなくなっていた。

「(んぐっ!)」

その時であった。


(続く)



2019年4月25日木曜日

住込み浪人[その67]








「(へ?)」

OK牧場大学の校庭で、竹箒を動かす手を止めた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、視線を感じた方に顔を向けたのであった。

「(どうして?)」

自分を凝視めていたのは、学生食堂のオバチャンではなくかったのだ。花柄のミディ丈スカートに黒のニットのトップスを着た可憐な女子学生であったのだ。

「ふふ」

女子学生は、少しく顎を引き、上目遣いに『住込み浪人』ビエール・トンミー青年を見ると、微笑んだ。

「(へ?)」

また、視線を感じたのだ。別の視線だ。

「ビエ様」

と云う声も聞こえたような気がした。

「(こちらも?)」

そうだ。また別の女子学生であった。襟をわざとずらしたピンクのトップスに、ハイウエストな薄いベージュのミニスカートを履き、こちらに向け口を少し尖らせていた。

「(へ?)」

いや、また、別の視線だ。

「(へ?)」

いや、またまた、別の視線だ。ああ、いくつもの視線が住込み浪人』ビエール・トンミー青年を刺していた。


「(な、な、何なんだ?)」

…..と、視線を向けてきていた女子学生の一人が、意を決したように住込み浪人』ビエール・トンミー青年に突進してきた。

「おおーっ!」

住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、思わず後ずさりした。

しかし……..


(続く)




2019年4月24日水曜日

住込み浪人[その66]







「うーむ…..痛っててて」

竹箒を右手に持ち、背伸びするように腰を伸ばし、左手で拳を作ると、背中と腰の境目をあたりをポンポンと叩いた。OK牧場大学の校庭である。

「ああ……」

と溜息をつきながらも、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、再び、竹箒を両手で持つと、校庭を掃き始めた。



「(エヴァの奴めえ….)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、友人のエヴァンジェリスト青年を恨んだ。

「(アトミック・ドロップなんて、広島出身なのに)」

前日、アトミック・ドロップでエヴァンジェリスト青年の膝に自らの臀部をしたたか打ちつけれられ、そのままバウンドして学生食堂の床に仰向けに落下し、意識を失った。その時、受けた体のダメージがまだ残っているのだ。

「ねえねえ…..」

痛みをおして竹箒が校庭を掻く音に紛れて、女性の声が聞こえたような気がした。

「…….じゃなくって?」

しかし、OK牧場大学は共学であり、女子大生も少なくない。その時も、校庭には何人も女子大生がいたので、彼女たちの声が聞こえてきてもなんら不思議ではなかった。

「…テイトー……辞退……」
「(ん?)」

少々気になる言葉聞こえたような気がしたが、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、校庭掃除に勤しんだ。『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、ただの『浪人』ではないからだ。あくまで『住込み浪人』なのだ。

「(んん?)」

しかし、箒の動きが止まった。

「(誰だ?)」

誰かに見られている気がしたのだ。

「(見られている?.......まさか、オバチャン?)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、竹箒を動かす手を止め、周囲に目を遣った。


(続く)




2019年4月23日火曜日

住込み浪人[その65]







「おじ….さん?.....おばちゃ……ん?」

OK牧場大学構内にある『寮』の部屋に寝かされた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が、うなされていた。

「ああ、確かに、おじさんと思っても仕方ないなあ。髭が生えていたもんな」

OK牧場大学大学院文学研究科フランス文学専攻で、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の友人であるエヴァンジェリスト青年が、誰に云うでもなく呟いた。

「んぐっ!」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が、ブリッジするように、腰を浮かせた。



「ああ、あの時のことを思い出して、『反応』してるんだな」

OK牧場大学の学生食堂で、エヴァンジェリスト青年のアトミック・ドロップを受け、悶絶し、意識を失って横たわっている時に、学食のカレー担当のオバチャンに、マウス・トゥ・マウスで人工呼吸をされた時のことを云っているのだ。

「オバチャンでも『反応』するとは、さすが変態だな」

と、寝たままの『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の右手が、エヴァンジェリスト青年に伸びてきた。

「おいおい、何をするんだ。ボクは、オバチャンじゃないぞ」

と云うと、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の右手を払いのけ、エヴァンジェリスト青年は、腰をあげ、部屋から出て行った。

「あれだけ『元気』なら大丈夫だろう」


(続く)




2019年4月22日月曜日

住込み浪人[その64]







「あら、嫌だよお」

OK牧場大学の学生食堂で、友人のエヴァンジェリスト青年のアトミック・ドロップを受け、床に寝たままの『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に、マウス・トゥ・マウスで人工呼吸をしていた学食のカレー担当のオバチャンは、少女のように頬をピンク色に染めた。

「アタシゃ、ソンナつもりじゃないんだよ」

オバチャンは、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の股間に視線を落としていた。

「(『アタシ』?えええ?おじさん、ではないのか?)

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、頬に髭が触れるのを感じていたのだ。



「でも、良かったあ。意識が戻ったようだねえ」

オバチャンは、愛おしそうに、両手で『住込み浪人』ビエール・トンミー青年を頬を撫でた。

「お、お、オバチャン….」

両目をしっかりと見開いた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は今、自分に覆いかぶさるように顔を寄せているのが、カレー担当のオバチャンであることをはっきりと認識した。

「まさか、オバチャンが……!?」

と云うと、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、再び、意識を失った。自分が、『おじさん』みたいなオバチャンにマウス・トゥ・マウスで人工呼吸をされたことを知ったからであった。

「『スミロー』ちゃん!」

失いいく意識の彼方にその声を聞いた。


(続く)



2019年4月21日日曜日

住込み浪人[その63]







「(んぐっ!)」

OK牧場大学の学生食堂で、友人のエヴァンジェリスト青年のアトミック・ドロップを受け、床に寝たままの『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、意識が起きる前に、股間が起きたようであった。

「(な、な、なんだ、これは?)」

続けて起きかけた意識が、疑問を持った。

「(柔らかい…..んぐっ!)」

と感じたが、それを言葉として発する装置である口が、何故か自由にならない。

「(んん?......カレー?…..んぐっ!)」

口は自由にならなかったが、鼻は解放されていた。

「(どうして、カレーの匂いがするんだ?....ああ、そうだ。学食にいたんだ……..んぐっ!)」



意識がかなり覚醒してきた。そして、それまで閉じられたままであった瞼が、ゆっくりと開いた。

「(……..?)」

開いた両眼は、間近にシミだらけの皮膚と白髪混じりの毛が飛び出している耳であった。

「(誰だ?…..んぐっ!)」

意識は疑問を持ったが、意識とは分離した股間には、ひたすら『異変』が波打っていた。

「(おじさん?)」


(続く)



2019年4月20日土曜日

住込み浪人[その62]




住込み浪人[その61]の続き)



「嫌だよ。気が付いておくれ!

カレー担当のオバチャンは、必死であった。OK牧場大学の学生食堂で、エヴァンジェリスト青年のアトミック・ドロップを受け、まだ床に寝たままの『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の許に体を寄せたままである。

「よし、こうなったら!」

と云うと、オバチャンは、胸を反り返し、大きく深呼吸をした。

「ええーっ!」

エヴァンジェリスト青年は、オバチャンが今から取ろうとしている行動を理解したのだ。

「『スミロー』ちゃん!」

オバチャンは、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の花を摘んだ。

「いくよお!」

オバチャンは、自らの口を『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の口に合わせた。

「フーッ!」

オバチャンは、マウス・トゥ・マウスで大きく息を吹き込んだ。

「ブフッ!」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が、息を吐いた。蘇生したのか?

「(『サキ』さん、どうして、人工呼吸を?ビエ君、少し気を失ってはいたけど、息はしてたんだけど…..)」

と、エヴァンジェリスト青年は思ったが、人生を賭けたかのようなオバチャンの勢いを前に、それを口にすることはできなかった。

「おお、『スミロー』ちゃん!....ブチュウウ!」



オバチャンは、再度、自らの口で『住込み浪人』ビエール・トンミー青年を塞いだ。


(続く)



2019年4月19日金曜日

住込み浪人[その61]







「どうしたの、『サキ』さん?」

OK牧場大学の学生食堂で、エヴァンジェリスト青年は、友人である『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の体をフォールしにいっていたが、俄仕立てのプロレスのレフリーとなったカレー担当のオバチャン『サキ』は、カウントを『スリー』と云いかけて止めたのだ。

「肩が上がってんのさ、『スミロー』ちゃんの」

オバチャンは、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の肩と学食の床との間に、自らの手を差し込んで、そこに空間があることを示した。

「そんなあ!」

エヴァンジェリスト青年は、口を尖らせ、不満を露わにした。

「アタシがレフリーだよ。レフリーは、絶対なのさ!」

オバチャンは、仁王立ちし、まだ『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の体の上に重なっているエヴァンジェリスト青年を見下ろした。

「オバチャン、ひょっとして、ビエ君に…..」

と、エヴァンジェリスト青年が反撃を試みたが、

「なんだよ、これえ」
「なんで、プロレスになんだよお?!」
「カレーのオバチャン、いつからレフリーになったんだ!?」
「茶番だ、茶番だ!」

と、周囲の学生たちは、その場を離れて行き出した。



「ま、いいか…..」

と、エヴァンジェリスト青年も、立ち上がった。

「『スミロー』ちゃん!」

と、カレー担当のオバチャンは、まだ床に寝たままの『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の許に体を寄せた。


(続く)


2019年4月18日木曜日

住込み浪人[その60]







「『サキ』さん!カウント、カウントです!」

OK牧場大学の学生食堂で、自分をヘッドロックに捉えた友人『住込み浪人』ビエール・トンミー青年を、ヘッドロックされたまま抱え上げ、その尾骶骨を、アトミック・ドロップで自らの膝に叩きつけたエヴァンジェリスト青年が、叫んだ。

「はいよ!」

声を掛けられたサキさんこと、OK牧場大学の学生食堂のカレー担当のオバチャンが、返事をし、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年とエヴァンジェリスト青年を取り囲む学生たちの輪から飛び出してきた。

「うううーっ!」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、尾骶骨を友人の膝にしたたか打ち付けられた後、反動で飛び上がったものの、直ぐに、体は、食堂の床に投げ出されていた。

「フライング・ソーセージー!」

と叫んだエヴァンジェリスト青年が、ジャンプすると、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の体の上に自らの体を重ねた。

「ワン、ツー!」

カレー担当のオバチャンが、体を伏せ、頬を床につけるようにして、床を平手で叩きながら、カウントを始めた。



「ええー!?あのオバチャンが、レフリー?」

周囲の学生たちは、目の前で展開されていることに、ただ驚くばかりであった。

「ス….」

オバチャンは、『スリー』と云いかけたところで、カウントを止めた。

「へ?」

エヴァンジェリスト青年は、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の体をフォールにいった体勢のまま、オバチャンの方に顔を向けた。


(続く)