(住込み浪人[その57]の続き)
「あんた、どこか違うと思ってたのよお」
OK牧場大学の学生食堂で、学食のカレー担当のオバチャンが呟いた。『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が実は、『テイトー』(帝立大学東京)に合格したのに、入学を辞退した、ということをエヴァンジェリスト青年がバラしたところであった。学食中の学生が、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年とエヴァンジェリスト青年を取り囲み、そこにカレー担当のオバチャンまでも混じっていた。
「ただの『スミロー』でないことは、分ってたわ。だって、何処か品があるし、でもセクシーでもあるし。あら、いやだ。私ったら!」
とカレー担当のオバチャンが、両手で顔を隠したことに、誰も気付かない。
「このビエール君がね、『テイトー』入学を辞退したのは……..」
周囲を見回しながら、エヴァンジェリスト青年が、演説調で、事情説明を始めた。
「そう、彼は、西洋美術への関心が強いんだ」
その言葉を聞き、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、慌てた。
「(ええー!なんだ、なんだ。エヴァちゃん、何を云い出すんだ!止めろ、やめろ!)」
「例えば、ドラクロワの…..」
エヴァンジェリスト青年がそこまで云った時、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、友人に飛び掛かって行った。
「このおおお!」
(続く)
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