2019年4月26日金曜日

住込み浪人[その68]







「ええ-っ!」

OK牧場大学の校庭で、女子学生たちの焦がれるような視線を浴びていた住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、女子学生の一人の突進に後ずさりしたものの、後ろからにも別の突進を感じたのだ。

「うおーっ!」

いや、前方と後方からだけではなかった。視線を浴びせてきていた女子学生が皆、突進してきたのだ。

「ビエさまあ!」
「『テイトー』を棄てるなんて、ステキー!」

住込み浪人』ビエール・トンミー青年はもう、女子学生たちの渦に竹箒を持ったまま回転していた。

「ああ、これが噂のパジャマねえ!」
「うーん、なんて素敵な臭さかしらあ!」
「イル・トンヴィのパジャマですって!?」

パジャマは、コニクロで買った980円の物であったが、いつの間にか、ブランド物と勘違いされていた。

「トンミーさまあ、サインしてえ!」

一人の女子学生が、色紙を差し出した。



「まあ、私もよお」
「私が先だわ!」

住込み浪人』ビエール・トンミー青年はまだ、女子学生たちの渦に竹箒を持ったまま回転し続け、眼も回していたが、女子学生たちが放つ芳香に、頭は完全に平衡感覚を失い、股間を制御することもできなくなっていた。

「(んぐっ!)」

その時であった。


(続く)



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