(住込み浪人[その67]の続き)
「ええ-っ!」
OK牧場大学の校庭で、女子学生たちの焦がれるような視線を浴びていた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、女子学生の一人の突進に後ずさりしたものの、後ろからにも別の突進を感じたのだ。
「うおーっ!」
いや、前方と後方からだけではなかった。視線を浴びせてきていた女子学生が皆、突進してきたのだ。
「ビエさまあ!」
「『テイトー』を棄てるなんて、ステキー!」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年はもう、女子学生たちの渦に竹箒を持ったまま回転していた。
「ああ、これが噂のパジャマねえ!」
「うーん、なんて素敵な臭さかしらあ!」
「イル・トンヴィのパジャマですって!?」
パジャマは、コニクロで買った980円の物であったが、いつの間にか、ブランド物と勘違いされていた。
「トンミーさまあ、サインしてえ!」
一人の女子学生が、色紙を差し出した。
「まあ、私もよお」
「私が先だわ!」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年はまだ、女子学生たちの渦に竹箒を持ったまま回転し続け、眼も回していたが、女子学生たちが放つ芳香に、頭は完全に平衡感覚を失い、股間を制御することもできなくなっていた。
「(んぐっ!)」
その時であった。
(続く)
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