(住込み浪人[その69]の続き)
「EBSテレビです」
OK牧場大学の校庭で、女子学生たちの群れを掻き分け、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に迫った男が名乗った。EBSテレビのディレクターのようであった。
「(EBS?ああ、江戸放送か)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、まだ眼を閉じていた。光を当てられていたからだ。
「あのお、眩しいんですがあ」
「ああ、ライト下げろ」
撮影用のライトが当てられていたのだ。
「君が、『住込み浪人』のビエール・トンミー君だね?」
「ええ….」
と答えた時、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、ハンディ・カメラが自分に向けられていることを知った。
「凄いじゃないか、『テイトー』に合格したのに辞退するなんて!」
「(凄いかなあ?ただ、『テイトー』に入学する気がなかっただけだが….)」
「いや、そこが凄いんだよ。入学する気のない『テイトー』を受験し、見事、合格はしたものの、初志貫徹、入学辞退するなんてね」
「(なんだ、こいつ。他人の心が読めるのか?)」
「今までどうして隠していたんだ!?」
「(いや、別に隠していた訳ではないが…….)」
「まあ、それはいいや。君にオファーがあるんだ」
(続く)
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