(住込み浪人[その48]の続き)
「(ああ、そうだとも。それだけが理由ではなかったんだ)」
OK牧場大学の学生食堂で、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、カレー・ライスを食べ終えるのに使ったスプーンに、ある男の像を見ていた。
「(ボクは、アイツとは違った…..)」
スプーンに浮かんだ像の男は、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の友人であった。
「(エヴァの奴は、自分に素直だった)」
スプーンに浮かんできた友人は、広島皆実高校の1年7ホーム(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)の時の同級生、エヴァンジェリスト青年であった。
「(エヴァは、文学部を志望した。それも、OK牧場大学の文学部だ。そして、そこに入れば、フランス文学を専攻するつもりでもあった)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、友人エヴァンジェリスト青年が、高校時代から、ある作家にはまっていることを知っていた。
「(サヤエンドー・シュウサク……)」
サヤエンドー・シュウサクは、OK牧場大学の文学部の卒業生であった。フランス文学を専攻したのだ。
「(エヴァの奴は、サヤエンドー・シュウサクの途を辿ることをなんの躊躇もなく決めた…..だが、ボクは…..!)」
(続く)
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