(住込み浪人[その52]の続き)
「(んぐっ!)」
OK牧場大学の学生食堂の、2階の『特別食堂』の手摺から顔を見せた友人であるエヴァンジェリスト青年に、自身の生態を見透かされたように思えた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、無意識の内に、両手を持っていっていた足の付け根に、自らの視線を落とした。
「よっ!やってるね!」
「は!?」
視線を上げると、ついさっきまで2階の『特別食堂』にいたエヴァンジェリスト青年が、横に立っていた。
「相変らずだね」
「な、何が!?」
「ほら、ソレさ。ふふ」
「だから、なんなんだよ、ソレって」
「カレーさ」
「??」
「カレーをズボンにこぼしたんだろ、パジャマのズボンに。相変らずそそっかしい男だなあ」
「(なんだ。知っていたんじゃないんだ)」
と、ほっとしてもいられなかった。学生食堂の周囲の学生たちが、コチラを見ていた。エヴァンジェリスト青年が発した『パジャマ』という言葉に反応したのだ。
「あの『スミロー』、パジャマ着て学食に来てるのか?」
という視線を浴びた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、その視線を弾き飛ばそうとするかの如く、大きな声を出した。
「おいおい、そんなことよりだあ、君はどうしてアソコにいたんだ?」
2階の『特別食堂』を指差した。
「はあ?知らないのか?『特別食堂』は、大学院生も入れるんだぜ」
「ええーっ!」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年のより大きな声に、周囲の学生たちの視線が更に集まって来た。
(続く)
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