2019年4月11日木曜日

住込み浪人[その53]







「(んぐっ!)」

OK牧場大学の学生食堂の、2階の『特別食堂』の手摺から顔を見せた友人であるエヴァンジェリスト青年に、自身の生態を見透かされたように思えた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、無意識の内に、両手を持っていっていた足の付け根に、自らの視線を落とした。

「よっ!やってるね!」
「は!?」

視線を上げると、ついさっきまで2階の『特別食堂』にいたエヴァンジェリスト青年が、横に立っていた。

「相変らずだね」
「な、何が!?」
「ほら、ソレさ。ふふ」
「だから、なんなんだよ、ソレって」
「カレーさ」
「??」
「カレーをズボンにこぼしたんだろ、パジャマのズボンに。相変らずそそっかしい男だなあ」



「(なんだ。知っていたんじゃないんだ)」

と、ほっとしてもいられなかった。学生食堂の周囲の学生たちが、コチラを見ていた。エヴァンジェリスト青年が発した『パジャマ』という言葉に反応したのだ。

「あの『スミロー』、パジャマ着て学食に来てるのか?」

という視線を浴びた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、その視線を弾き飛ばそうとするかの如く、大きな声を出した。

「おいおい、そんなことよりだあ、君はどうしてアソコにいたんだ?」

2階の『特別食堂』を指差した。

「はあ?知らないのか?『特別食堂』は、大学院生も入れるんだぜ」
「ええーっ!」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年のより大きな声に、周囲の学生たちの視線が更に集まって来た。


(続く)


0 件のコメント:

コメントを投稿