(住込み浪人[その56]の続き)
「君だって……」
OK牧場大学の学生食堂で、友人の『住込み浪人』ビエール・トンミー青年を指差したエヴァンジェリスト青年は、視線を周囲に送り、そして、再び、友人を凝視めた。
「『テイトー』に合格したのに、入学を辞退したではないか!」
と、高らかに何かの宣言をするかのように、友人の秘密を公衆の前で明かした。
「ええーっ!」
「ほえーっ!」
「な、な、何故?」
「どうしてなんかいねえ?」
周囲の学生たちは、驚愕、疑問の言葉を口々に発した。広島出身者もいるようであった。
「そうだ。そんなことは、普通、あり得ないことだろう。しかし、ビエール・トンミー君は、そんなあり得ない選択をしたのだ。そして、その結果、今ここに、『住込み浪人』としている訳だ」
友人の暴露に『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、頬を紅潮させた。
「(エヴァ、どうして君は…..?)」
気付いてみると、周囲の学生だけではなく、今は、OK牧場大学の学生食堂中の学生が、エヴァンジェリスト青年と『住込み浪人』ビエール・トンミー青年を囲んでいた。
「あら、『スミロー』ちゃんったら!」
カレー担当のあのオバチャンも職場を離れ、二人の近くまで来ていた。
(続く)
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