(住込み浪人[その70]の続き)
「トンミー君、君、ウチの『テイトー王』って番組、知ってるよね?」
OK牧場大学の校庭で、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、EBSテレビのディレクターにマイクを突きつけられ、迫られていた。カメラも回っているようであった。
「あ、まあ、知らなくはありませんが……」
自身に向けられたハンディ・カメラの赤いランプを気にしながら、やや曖昧に答えた。
「君さあ、『テイトー王』に出ようよ!」
と云うと、EBSテレビのディレクターは、親しげに『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の肩をポンと叩いた。
「はあ?」
全く予期せぬ展開に、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、下顎を下げるように口を開けていた。
「ウチのプロデューサーからのご指名なんだよ」
EBSテレビのディレクターは、満面に笑みを浮かべていた。
「だけど、ボクは、『テイトー』の学生じゃないし」
「ああ、勿論、『テイトー』チームじゃないさ」
「へ?芸能人チーム?」
「そうとも!」
「いや、でも、ボクは芸能人じゃないし…..」
「いいんだよ、君は、芸能人さ」
「だって、俳優でも芸人でもないし…..」
「あああ、君らしくもない、そんな固定観念に縛られて!」
「テレビにだって出たことないし….」
「ふん!」
と、EBSテレビのディレクターは、手にしていたマイクを『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の鼻の頭に押し付けた。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿