2019年4月29日月曜日

住込み浪人[その71]







「トンミー君、君、ウチの『テイトー王』って番組、知ってるよね?」

OK牧場大学の校庭で、住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、EBSテレビのディレクターにマイクを突きつけられ、迫られていた。カメラも回っているようであった。

「あ、まあ、知らなくはありませんが……」

自身に向けられたハンディ・カメラの赤いランプを気にしながら、やや曖昧に答えた。

「君さあ、『テイトー王』に出ようよ!」

と云うと、EBSテレビのディレクターは、親しげに住込み浪人』ビエール・トンミー青年の肩をポンと叩いた。



「はあ?」

全く予期せぬ展開に、住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、下顎を下げるように口を開けていた。

「ウチのプロデューサーからのご指名なんだよ」

EBSテレビのディレクターは、満面に笑みを浮かべていた。

「だけど、ボクは、『テイトー』の学生じゃないし」
「ああ、勿論、『テイトー』チームじゃないさ」
「へ?芸能人チーム?」
「そうとも!」
「いや、でも、ボクは芸能人じゃないし…..」
「いいんだよ、君は、芸能人さ」
「だって、俳優でも芸人でもないし…..」
「あああ、君らしくもない、そんな固定観念に縛られて!」
「テレビにだって出たことないし….」
「ふん!」

と、EBSテレビのディレクターは、手にしていたマイクを住込み浪人』ビエール・トンミー青年の鼻の頭に押し付けた。


(続く)


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