(住込み浪人[その58]の続き)
「ううーっ!」
OK牧場大学の学生食堂で、その学食にいる総ての学生たちに囲まれた中、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、自分の秘密を暴露しようとした友人エヴァンジェリスト青年に飛び掛かって行ったのだ。
「ええーい!」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、右腕をエヴァンジェリスト青年の頭に回し、締め上げた。ヘッドロックになっていたが、プロレスを知らず、興味もない彼自身に、その認識はなかった。
「うっ!....チ、チクシ….」
エヴァンジェリスト青年は呻いたが、アマチュア・プロレスラーと自認する彼が、ただやられている訳がなかった。
「ト、ト、トォーッ!」
ヘッドロックをされたまま、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の腰に左腕を回し、右腕を股間差し込むと、その右腕で抱え込むようにして、友人の体を自らの肩の上まで持ち上げた。
「おおーっ!」
二人を取り囲んだ学生たちは、驚愕の声を上げた。その声に励まされたかのように、エヴァンジェリスト青年は、友人を抱え上げたまま、
「アトミックー!....よい、よい、よい」
と1歩、2歩。3歩と前進した。そして…….
「ドロップー!」
と、左脚を突き出し、腰を落とし、膝を折ると、抱え上げた友人の体を前方に落とし、尾骶骨を左膝に打ち付けた。
「おおお!アトミック・ドロップだあ!」
誰かプロレスを知る学生が、叫んだ。そうだ、エヴァンジェリスト青年は、自分をヘッドロックに捉えた友人『住込み浪人』ビエール・トンミー青年にアトミック・ドロップを掛けたのだ。
「うおおおおおおおおお~ーーーーーー!」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、叫び声以上の声を上げた。
(続く)
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