2019年4月19日金曜日

住込み浪人[その61]







「どうしたの、『サキ』さん?」

OK牧場大学の学生食堂で、エヴァンジェリスト青年は、友人である『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の体をフォールしにいっていたが、俄仕立てのプロレスのレフリーとなったカレー担当のオバチャン『サキ』は、カウントを『スリー』と云いかけて止めたのだ。

「肩が上がってんのさ、『スミロー』ちゃんの」

オバチャンは、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の肩と学食の床との間に、自らの手を差し込んで、そこに空間があることを示した。

「そんなあ!」

エヴァンジェリスト青年は、口を尖らせ、不満を露わにした。

「アタシがレフリーだよ。レフリーは、絶対なのさ!」

オバチャンは、仁王立ちし、まだ『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の体の上に重なっているエヴァンジェリスト青年を見下ろした。

「オバチャン、ひょっとして、ビエ君に…..」

と、エヴァンジェリスト青年が反撃を試みたが、

「なんだよ、これえ」
「なんで、プロレスになんだよお?!」
「カレーのオバチャン、いつからレフリーになったんだ!?」
「茶番だ、茶番だ!」

と、周囲の学生たちは、その場を離れて行き出した。



「ま、いいか…..」

と、エヴァンジェリスト青年も、立ち上がった。

「『スミロー』ちゃん!」

と、カレー担当のオバチャンは、まだ床に寝たままの『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の許に体を寄せた。


(続く)


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