(住込み浪人[その49]の続き)
「『ミツ』はねえ……..」
『ミツ』という名前に、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、顔を上げた。OK牧場大学の学生食堂で、カレー・ライスを食べ終えるのに使ったスプーンに、友人であるエヴァンジェリスト青年の像を見ていたところであったのだ。
「(『ミツ』って……『サトミツ』….?)」
クイズ番組『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『佐藤ミツ』のことかと思ったのだ。『サトミツ』は、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年のお気に入りで、彼の足の付け根辺りには、既にある種の『反応』の兆しがあった。
しかし…….
「『わたしを棄てた女』の『田森ミツ』は、イエスの……」
という言葉に、誤解と直ぐに悟り、『反応』は兆しのままで終ったが、今度は、その言葉を発する主のことが気になった。
「(アイツかあ?)」
聞き覚えのある、それもかなり聞き覚えのある男の声のように思えたのだ。
「『田森ミツ』が働いていた『カマ風呂』は……」
その声は、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の頭上から降りて来ていた。
「(アイツだ!だが、何故、アイツが『上』に…..?)」
(続く)
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