(住込み浪人[その99]の続き)
「では、第2ステージです!」
EBSテレビのスタジオCで、クイズ番組『テイトー王』の司会の一人、お笑い芸人のナンカイノー・アメカイノーが、片手を上げ、やり直しの第2ステージの開始を宣言した。
「さあ、『デヴィル夫人』率いる芸能人チーム、追い上げなるか!?」
もう一人の司会者で、元お笑い芸人のヒロニも場を盛り上げるように、そう云った時であった。
「ストップ!ストップ!ストップ!」
再び、チーフ・ディレクターが、収録を止めた。
「ええー!またあ?どうしたの?」
ヒロニが、不快を隠さなかった。
「すみません。また、雑音のようなんです」
チーフ・ディレクターは、ヒロニに頭を下げた。
「また、『んぐっ!』です。今度は、さっきの『んぐっ!』の他に、高音の『んぐっ!』も混じっていました」
ミキサー室から、そう報告があったのだ。
「なんなの、雑音って?」
「ええ、まあ、それが『んぐっ!』だそうで…..」
「ええ?『んぐっ!』?なんだ、それえ?」
「いや、私にもなんだか….」
そんなやり取りを聞いても、アシスタント・ディレクターの松坂慶江は、今度は、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の所に向かわなかった。
「(……..)」
両手を体の前で合わせ、なんだかモジモジしていた。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿