2019年5月28日火曜日

住込み浪人[その100]




住込み浪人[その99]の続き)



「では、第2ステージです!」

EBSテレビのスタジオCで、クイズ番組『テイトー王』の司会の一人、お笑い芸人のナンカイノー・アメカイノーが、片手を上げ、やり直しの第2ステージの開始を宣言した。

「さあ、『デヴィル夫人』率いる芸能人チーム、追い上げなるか!?」

もう一人の司会者で、元お笑い芸人のヒロニも場を盛り上げるように、そう云った時であった。

「ストップ!ストップ!ストップ!」

再び、チーフ・ディレクターが、収録を止めた。

「ええー!またあ?どうしたの?」

ヒロニが、不快を隠さなかった。

「すみません。また、雑音のようなんです」

チーフ・ディレクターは、ヒロニに頭を下げた。

「また、『んぐっ!』です。今度は、さっきの『んぐっ!』の他に、高音の『んぐっ!』も混じっていました」

ミキサー室から、そう報告があったのだ。

「なんなの、雑音って?」
「ええ、まあ、それが『んぐっ!』だそうで…..」
「ええ?『んぐっ!』?なんだ、それえ?」
「いや、私にもなんだか….」

そんなやり取りを聞いても、アシスタント・ディレクターの松坂慶江は、今度は、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の所に向かわなかった。

「(……..)」

両手を体の前で合わせ、なんだかモジモジしていた。




(続く)



0 件のコメント:

コメントを投稿