2019年5月20日月曜日

住込み浪人[その92]







「エヴァ!」

EBSテレビのクイズ番組『テイトー王』出演者控室に設置されたテレビ・モニターに大きく映し出された友人の顔を見た『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、驚愕した。

「あら、君、この子、知ってるの?」

エヴァンジェリスト青年を気に入ったらしい中年女性マネージャーが、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の方に顔を向け、訊いた。

「え?ああ、友人です。高校の同級生です」
「なんて子?」
「子?...エヴァンジェリスト君です」
「なんだか難しくて話の内容は分かんないけど、あの子、銀行関係者?」
「いえ、大学院生です。OK牧場大学の」
「あらそうなの。じゃ、経済か商学が専門なのね」
「いえ、文学研究科です。フランス文学が専門です」
「え!?うそー!」
「いえ、本当です。ボクもアイツが何故、銀行関係のことに詳しいのか、分りません。一浪の後、今年、大学に入ったばかりで、でもいつの間にか大学院の修士課程に飛び級で上がっちゃってるし」
「なに、それ!?」
「広島県立広島皆実高校1年7ホームの時、『されど血が』という放送劇の監督、脚本を担当したり、文化祭で占い師になったりはしていましたけど、銀行、金融に関心はなかったと思います」



「そう、お芝居には興味あったのね」
「興味があったかどうか知りません。演劇部に入部を勧誘されたとは聞いたことがありますが」
「ああ、やっぱりね。あの美貌を放っておく手はないものねえ…..あれ?」

そこで、中年女性マネージャーは、首を傾げた。


(続く)



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