(住込み浪人[その74]の続き)
「じゃ、楽しみにしてるよ、アラン!」
EBSテレビのディレクターは、OK牧場大学の校庭で竹箒を持ったまま呆然としている『住込み浪人』ビエール・トンミー青年を、勝手に『アラン』と呼んだ。『太陽があっちっち』の二枚目俳優『アラン・ドロソ』(あらん・どろそ)の『アラン』である。
「そうだ、『テイトー王』では、君は、『アラン』だ!『アラン・スミロー』としよう!」
EBSテレビのディレクターは、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が、もう自身のクイズ番組『テイトー王』に出演する、と決めてかかっている。
「いや、ボクには、受験勉強が……」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、ズボンの(パジャマのズボンである)後ろポケットから、『赤尻の粒単』を取り出した。赤尻好子の『英語基礎単語集』である。ポケットに入る粒くらい小さいから『粒単』と云われる。
「君、人気出ると思うんだがなあ」
と、EBSテレビのディレクターは、自分と『住込み浪人』ビエール・トンミー青年を取り囲んだままでいるOK牧場大学の女子学生たちを見回した。
「そうよ、出るべきよ、アラン!」
「見たいわ、アランをテレビで!」
「やっつけてよ、『テイトー』の奴らを、アラン!」
女子学生たちの大合唱だ。
「あの娘も楽しみにしてるんだけどなあ。ふふ」
(続く)
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