2019年5月14日火曜日

住込み浪人[その86]







「着いて来て。でも、近づかないで!」

青坂のEBSテレビ本社ビルのエレベーターを飛び出すように降りたクイズ番組『テイトー王』のアシスタント・ディレクター松坂慶江は、振り向かずに、背後にいるはずの『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に向け、そう云った。

「あ、はい……」

初めてのテレビ局内に戸惑いながら、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、アシスタント・ディレクターの後を追った。

「(ん?なんだ、これは?)」

廊下の壁にポスターが貼ってあったのだ。『日曜ドラマ・集団昇天』とあった。

「(こんなドラマあったかなあ?)」

『日曜ドラマ・集団昇天』は、次のクールのドラマであり、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、まだその存在を知らなかったのだ。



「(ふーん、『尾道マサアキ』が主演かあ)」

と、ハンサムな歌手で俳優『尾道マサアキ』主演ドラマのポスターから、視線を外し、自分の前をお尻をプリプリ振りながら歩く、アシスタント・ディレクターの方に顔を向けた時であった。

「(んぐっ!)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の全身に痺れが走り、股間は、その痺れのあまりに『硬直』したのであった。


(続く)



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