(住込み浪人[その85]の続き)
「着いて来て。でも、近づかないで!」
青坂のEBSテレビ本社ビルのエレベーターを飛び出すように降りたクイズ番組『テイトー王』のアシスタント・ディレクター松坂慶江は、振り向かずに、背後にいるはずの『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に向け、そう云った。
「あ、はい……」
初めてのテレビ局内に戸惑いながら、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、アシスタント・ディレクターの後を追った。
「(ん?なんだ、これは?)」
廊下の壁にポスターが貼ってあったのだ。『日曜ドラマ・集団昇天』とあった。
「(こんなドラマあったかなあ?)」
『日曜ドラマ・集団昇天』は、次のクールのドラマであり、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、まだその存在を知らなかったのだ。
「(ふーん、『尾道マサアキ』が主演かあ)」
と、ハンサムな歌手で俳優『尾道マサアキ』主演ドラマのポスターから、視線を外し、自分の前をお尻をプリプリ振りながら歩く、アシスタント・ディレクターの方に顔を向けた時であった。
「(んぐっ!)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の全身に痺れが走り、股間は、その痺れのあまりに『硬直』したのであった。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿