(住込み浪人[その100]の続き)
「(知っている。私だ……..)」
EBSテレビのスタジオCで、クイズ番組『テイトー王』の収録が2度目の中断をなった理由を、アシスタント・ディレクターの松坂慶江は知っていた。
「(でも、それは、あの男のせい!)」
松坂慶江は、恨めしげにスタジオ隅に佇むパジャマ姿の男を見た。『住込み浪人』ビエール・トンミー青年である。
「(あの男の発する臭いのせい!ホント、臭くてたまらない。んん、もうどうにもたまらないわ!んぐっ!んぐっ!んぐっ!)」
と、ジャケットのポケットからマスクを取り出し、急いで口を覆った。
「(ふうう…..)」
マスク越しに深呼吸をした。
「じゃ、再開します。ヒロニさん、アメちゃん、お願いします!」
というチーフ・ディレクターの掛け声で収録は再開することとなった。
「『んぐっ!』って、何のことだか分からないけど、まあいいや」
と、大人な対応を見せたヒロニであったが、頬を膨らませている出演者がいた。
「(もう!調子が乱れちゃう!何なのよ、『んぐっ!』って。そんなの勉強した中にはなかったわ)」
(続く)
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