2019年5月23日木曜日

住込み浪人[その95]







「ワタリガニさん….」

EBSテレビの廊下で、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が今、すれ違おうとしている男に、そのマネージャーのような男が、声をかけた。

「(あ、そうだ!ズワイガニではなく、ワタリガニだ。渡蟹(ワタリガニ)徹夜(テツヤ)だ!)」


『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、レイヨルのサングラスをかけ、頭を角刈りにした、如何にもスターといった風情のその俳優の名前を思い出した。

「(エヴァの奴がいたら、興奮しただろうなあ)」

友人のエヴァンジェリスト青年は、

「ボクは、いつか『岩原プロ』入りすることになるだろう」

とほざいているのだ。

往年の大スターで、今は亡き『岩原裕三郎』が設立した『岩原プロモーション』の現在の看板俳優にして事実上の代表であるのが、『渡蟹徹夜』であった。

「あの青年なんですが、まだ連絡先が分りません。申し訳ありません」

マネージャーらしき男が、渡蟹徹夜に頭を下げた。

「ああ、あのエヴァなんとかという青年かあ」

というスターの言葉に、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、思わず反応した。

「え!?エヴァ?」


(続く)


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