(住込み浪人[その94]の続き)
「ワタリガニさん….」
EBSテレビの廊下で、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が今、すれ違おうとしている男に、そのマネージャーのような男が、声をかけた。
「(あ、そうだ!ズワイガニではなく、ワタリガニだ。渡蟹(ワタリガニ)徹夜(テツヤ)だ!)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、レイヨルのサングラスをかけ、頭を角刈りにした、如何にもスターといった風情のその俳優の名前を思い出した。
「(エヴァの奴がいたら、興奮しただろうなあ)」
友人のエヴァンジェリスト青年は、
「ボクは、いつか『岩原プロ』入りすることになるだろう」
とほざいているのだ。
往年の大スターで、今は亡き『岩原裕三郎』が設立した『岩原プロモーション』の現在の看板俳優にして事実上の代表であるのが、『渡蟹徹夜』であった。
「あの青年なんですが、まだ連絡先が分りません。申し訳ありません」
マネージャーらしき男が、渡蟹徹夜に頭を下げた。
「ああ、あのエヴァなんとかという青年かあ」
というスターの言葉に、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、思わず反応した。
「え!?エヴァ?」
(続く)
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