(住込み浪人[その72]の続き)
「君の場合はね。テレビに出れば誰でも芸能人、っていうのとは、ちょっと違うのさ」
OK牧場大学の校庭で、EBSテレビのディレクターは、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の耳元に口を寄せてきた。
「(んっ!臭い!)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、眉間と鼻とを顰めた。
「ああ、昨晩、たらふく餃子を食べたのさ」
「(え?やはり、他人の心を読めるのか?)」
「君はさあ、普通じゃないんだよ」
EBSテレビのディレクターは、したり顔となっていた。
「(えっ!『変態』なのを知っているのか?)」
「いや、『変態』かどうかは知らないが、その美貌は、一目で分かるさ」
「美貌?」
「ああ、君は、さっき、ここOK牧場大学の女子学生たちに迫られていただろう」
「ええ、まあ」
「それは、君がただ『テイトー』に合格したのに辞退したから、という稀有な男だからではないんだ。美貌さ。君の美貌があってこそのことなんだ」
「(ああ……)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の眼が、虚空に飛んだ。
(続く)
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