(住込み浪人[その83]の続き)
「うん?『ベンツー』じゃあないのか…..」
OK牧場大学の正門前から動き出したEBSテレビの迎えのクルマの中で、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が、呟いた。
「はあ!?アンタ、『便通』って、お腹でもくだしてるのかい?そう云えば、なんか臭いなあ」
運転手は、その呟きを聞き逃さなかった。
「いえ、漏らしてません」
「ん、もーっ!臭いのは、そのせいじゃなくって…..」
助手席に座ったクイズ番組『テイトー王』の女性アシスタント・ディレクターは、窓から顔を出すようにして云った。
「『ベンツー』って、クルマのメーカーで….」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、小声で抗弁した。
「ふん!そんなことくらい分ってるさ。何を贅沢云ってるの。アンタ、『スミロー』だろ。『スミロー』に『ベンツー』なんて高級車、勿体無いよ」
「すみません……実家のクルマが『ベンツー』で、殆ど『ベンツー』にしか乗ったことがないので….」
「金持ちの家の馬鹿ボンボンかあ。まあ、金はあっても、『テイトー』には入れないからなあ」
「いえ、この人、『テイトー』には合格したんです。ふう」
アシスタント・ディレクターの松坂慶江は、窓外の空気を吸いながら、説明した。
「はあ?だって、『スミロー』だろ?」
「でもそうなんですう。『テイトー』に合格にしたのに辞退したんです、この人。ふう」
「まあ、よく分らないけど、着いたよ」
クルマが、EBSテレビ本社の玄関に止った。
(続く)
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