(住込み浪人[その81]の続き)
「少し横になりますか?」
OK牧場大学構内にある『寮』の部屋で、自身の腕の中にいるEBSテレビのクイズ番組『テイトー王』のアシスタント・ディレクターにそう声をかけた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、アシスタント・ディレクターの股間の『異変』に気付いていなかった。アシスタント・ディレクターは、女性なのだ。
「いえ、とんでもない!」
アシスタント・ディレクター松坂慶江は、必死で身を起こし、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年から離れた。
「(とんでもないわ。この布団に寝ちゃったら、私、とんでもないことになっちゃう)」
「無理しなくても」
「いえ、時間がありませんわ。さあ、行きましょう!」
と云うと、松坂慶江は、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に背を向け、独り部屋を出て行った。
「あ、待って下さい」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、後を追って、部屋を出た。勿論、パジャマのままである。
「正門前にクルマを待たせてます」
松坂慶江は、振り向くことをせず、『寮』を出て、正門へと向った。
「(近づいてわ、ダメだわ、あの人に)」
(続く)
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