2019年5月10日金曜日

住込み浪人[その82]







「少し横になりますか?」

OK牧場大学構内にある『寮』の部屋で、自身の腕の中にいるEBSテレビのクイズ番組『テイトー王』のアシスタント・ディレクターにそう声をかけた住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、アシスタント・ディレクターの股間の『異変』に気付いていなかった。アシスタント・ディレクターは、女性なのだ。

「いえ、とんでもない!」

アシスタント・ディレクター松坂慶江は、必死で身を起こし、住込み浪人』ビエール・トンミー青年から離れた。

「(とんでもないわ。この布団に寝ちゃったら、私、とんでもないことになっちゃう)」


「無理しなくても」
「いえ、時間がありませんわ。さあ、行きましょう!」

と云うと、松坂慶江は、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に背を向け、独り部屋を出て行った。

「あ、待って下さい」

住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、後を追って、部屋を出た。勿論、パジャマのままである。

「正門前にクルマを待たせてます」

松坂慶江は、振り向くことをせず、『寮』を出て、正門へと向った。

「(近づいてわ、ダメだわ、あの人に)」


(続く)




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