『少年』は、その年(1968年)、猛烈な人気となっていたグループ・サウンズの『ザ・タイガース』が発表した『花の首飾り』という曲のどこがいいのか分らなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その106]の続き)
「(ボクが決める)」
その日、担任の『オーカクマク』先生に生徒会長選挙に出るように云われた『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)2年のエヴァンジェリスト少年は、下校途中でもそう思った。
「(でも、どう決めるんだ?)」
母親に相談すると、『あんたあ、やりんさい!』と云われることは眼に見えていたので、自分で決めることにしたものの、どう決めていいかまでは考えていなかったのだ。
「(そもそも、『オーカクマク』先生はどうしてボクに生徒会長をしろなんて云ったんだろう?)」
エヴァンジェリスト少年は、皆実小学校でも毎年、学級委員をしていたし、『ミドリチュー』でも、1年の時も、2年になっても級長をしてきていた。『よい子のあゆみ』や『通知表』には、よく『指導力がある』と書かれていた。
「(でも、そんな生徒は他にもいるだろうし…..)」
エヴァンジェリスト少年は知らなかった。いつも学級委員や級長をしてきた子の中でも特に、指導力があると見られていたことを。
「(よく分からない)」
そして、何よりも生徒たちに、特に、女子生徒に人気があることを知らなかった。
「やっぱりアラン・ドランじゃねえ」
文化祭のブラスバンドの演奏が終った時に、女子生徒たちがため息交じりにそう漏らしていたことを、『ミドリチュー』の『アラン・ドロン』本人は知らなかったのだ。
(続く)