2019年11月30日土曜日

ハブテン少年[その107]




『少年』は、その年(1968年)、猛烈な人気となっていたグループ・サウンズの『ザ・タイガース』が発表した『花の首飾り』という曲のどこがいいのか分らなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


************************





「(ボクが決める)」

その日、担任の『オーカクマク』先生に生徒会長選挙に出るように云われた『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)2年のエヴァンジェリスト少年は、下校途中でもそう思った。

「(でも、どう決めるんだ?)」

母親に相談すると、『あんたあ、やりんさい!』と云われることは眼に見えていたので、自分で決めることにしたものの、どう決めていいかまでは考えていなかったのだ。

「(そもそも、『オーカクマク』先生はどうしてボクに生徒会長をしろなんて云ったんだろう?)」

エヴァンジェリスト少年は、皆実小学校でも毎年、学級委員をしていたし、『ミドリチュー』でも、1年の時も、2年になっても級長をしてきていた。『よい子のあゆみ』や『通知表』には、よく『指導力がある』と書かれていた。

「(でも、そんな生徒は他にもいるだろうし…..)」

エヴァンジェリスト少年は知らなかった。いつも学級委員や級長をしてきた子の中でも特に、指導力があると見られていたことを。



「(よく分からない)」

そして、何よりも生徒たちに、特に、女子生徒に人気があることを知らなかった。

「やっぱりアラン・ドランじゃねえ」

文化祭のブラスバンドの演奏が終った時に、女子生徒たちがため息交じりにそう漏らしていたことを、『ミドリチュー』の『アラン・ドロン』本人は知らなかったのだ。


(続く)




2019年11月29日金曜日

ハブテン少年[その106]




『少年』は、その年(1968年)、猛烈な人気となっていたグループ・サウンズの『ザ・タイガース』が発表した『君だけに愛を』という曲のどこがいいのか分らなかったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


************************





「(お母ちゃんに云わんといけん)」

エヴァンジェリスト少年は、心中の言葉であったが、思わず広島弁になっていた。エヴァンジェリスト家のことは、何事も母親が決めるのであった。

「(でも…..)」

躊躇した。『オーカクマク』先生に生徒会長選挙に出るように云われたことを母親に告げた時のことを想像した。

「(お母ちゃんに云うと、きっと、『あんたあ、やりんさい!』と云うだろう」

ハハ・エヴァンジェリストは、家庭のことだけでなく、町内会のことでも、PTAのことでも仕切る人間であった。今時(21世紀)であったら、市議会議員くらいにはなっていただろう。ひょっとすると、市議会議員から始まって、県議会議員、国会議員になっていたかもしれない。



「(絶対、『あんたあ、やりんさい!』と云う)」

母親がとるであろう反応に確信があった。

「(ダメだ、ダメだ!)」

教室の隅で独り、頭を振った。

「(ボクが決める)」

虚空を凝視目る少年の眼は座っていた。

「(自分のことは自分で決めるんだ!)」

『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)2年の少年は、もう母親の云うことにただ従うだけの少年ではなくなってきていたのだ。だって…..

「ボクと付き合ってくれないか?!」

と、下校途中の1学年下の女子生徒『パルファン』子さんを追いかけ、告白したのだ。自分の意志で、いや正しくは、自分でも止められぬ自分の中の何かに突き動かされて、そんな言動をとったのだ。


(続く)



2019年11月28日木曜日

ハブテン少年[その105]




『少年』は、その年(1968年)、『意地悪ばあさん』で有名であった青島幸男が参議院議員になったのには驚いたが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


************************





「エヴァ君、キミ、ちょっといいか?」

文化祭が終って少し経った時、エヴァンジェリスト少年は、担任の『オーカクマク』先生に呼び止められた。

「は、はい….」

『オーカクマク』先生は、エヴァンジェリスト少年を教室の隅に連れて行った。

「キミ、出てみないか?」

『オーカクマク』先生は、小声でそう云った。

「は?」
「生徒会長だよ」
「え!」
「もうすぐ生徒会長選挙があるだろう」
「はい…..」
「キミがするといいと思うんだけどなあ」
「いやあ…..」
「まあ、すぐに決めなくていいから考えておきなさい」



と云うと、『オーカクマク』先生は、教室を出て行った。

「(ええー!)」

エヴァンジェリスト少年は、呆然と、教室の隅に立ち尽くしていた。


(続く)





2019年11月27日水曜日

ハブテン少年[その104]




『少年』は、その年(1968年)、『パンパカパーン、今週のハイライト』で有名であった漫才師の横山ノックが参議院議員になったのには驚いたが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ(そもそもハブテルことでもなかった)。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


************************





「(素敵よ、アナタ)」

きっと『妻』はそう思っているだろうと夢想しながら、エヴァンジェリスト少年は、ステージの上で、アルト・サックスを吹く。1968年の『広島市青少年センター』である。『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の文化祭、ブラスバンド部(吹奏楽部)の演奏だ。

「(アタシたちの『新しい世界』なのね。ふふ)」

その年の演奏曲は、ドボルザークの『新世界』であった。少年が妄想する2人の『新世界』は何故か、テレビ・ドラマ『名犬ラッシー』に出てくる米国の豊かな生活のある家であったが、ドボルザークの『新世界』が米国を意味していたことからすると、あながち妄想とは言い切れない。


「ブー、ブブー…..」

『妻』との豊かな生活を夢想しながら、エヴァンジェリスト少年は、相変らず、自分のアルト・サックスのパートがどこであるか明確には分らないまま、

「(ええい!まあ、いいか、この辺で…)」

と、アルト・サックスを吹いた。

「ブー、ブブー…..」

そして、なんとか『新世界』の演奏はエンディングを迎えた。

「バチバチバチバチバチバチ!」

万雷の拍手であった。ブラスバンドの演奏が良かったのからであるのか、お愛想に過ぎないのかは、分らない。しかし、女子生徒の多くは今年も、ある一点を、いや、ステージ上のある男子生徒を凝視めながら、必死で手を叩いていた。

「やっぱりアラン・ドランじゃねえ」

演奏が終り、ブラスバンドの部員全員が立ち上がる。アルト・サックスを首から下げた『アラン・ドロン』も立ち上がった。

「(どこだろう?)」

客席に『妻』を探すが、客席は暗く、やはり見つからない。指揮をされたムジカ先生と一緒に部員全員、礼をする。

「バチバチバチバチバチバチ!」

『妻』も『夫』に懸命の拍手を送っていたことを、つまり『妻』の想いを、『夫』である少年は、その時はまだ知らなかった。

「バチバチバチバチバチバチ!」

そして、鳴り止まぬ拍手の中に、前の『妻』である『クッキー』子さんのものも混じっていたかもしれなかったが、新しい『妻』に夢中な『夫』の頭にも心にも『クッキー』子の『ク』の字も浮かぶことはなかった。


(続く)



2019年11月26日火曜日

ハブテン少年[その103]




『少年』は、その年(1968年)、参議院議員になった小説家の石原慎太郎は好きにはなれなかったでが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


************************





「ボクは、『フィンランディア』より『新世界』の方がいいなあ」

『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)でエヴァンジェリスト少年と同じ2年生のジャスティス君は、好きでブラスバンド部(吹奏楽部)に入ったのだ。友人ではあるが、そこが、エヴァンジェリスト少年とは違った。エヴァンジェリスト少年は、ブラスバンド部の顧問であるムジカ先生に強いられて入部したのだ。

「(どっちでもいい…)」

エヴァンジェリスト少年は、相変らず、全体練習の時、アルト・サックスの自分が曲のどこから入っていいのか分らなかった。

「(今、どこだ?)」

アルト・サックスのパートは、メロディーラインではないので、『新世界』でも『フィンランディア』の場合と同様に、小節を数えてはいたが、段々と何小節まで進んだか分らなくなる。

「(そろそろか?)」

『新世界』には、『フィンランディア』と異なり、自分が知る部分があった。第2楽章だ。

「とーおきーやーま-にー」

という唄になっている部分である。

「ひーはおーちてー」



しかし、それ以外の部分は知らない曲であった。興味はなかった。

「(ええい!まあ、いいか、この辺で…)」

エヴァンジェリスト少年のアルト・サックスは、『フィンランディア』の時と同じように、適当に曲に入っていった。

「ブー、ブブー…..」


(続く)



2019年11月25日月曜日

ハブテン少年[その102]




『少年』は、その年(1968年)、参議院議員になった僧侶にして小説家の今東光の『毒舌説法」は好きではなかったでが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


************************





「新しい世界だ!」

『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の音楽室でブラスバンドの練習中である。エヴァンジェリスト少年は、口からアルト・サックスのリードの竹の味を唾のように飛ばしながら、叫んだ。



「ああ、『新世界』かあ」

友人でブラスバンドではトロンボーンを吹くジャスティス君は、納得した。

「綺麗だあ….」
「綺麗?」
「ああ、綺麗だあ…..」
「うーん、綺麗というか、いい曲だよね」

その年(1968年)、『ミドリチュー』のブラスバンドは、文化祭で演奏する曲が、ドボルザークの『新世界』と決まり、練習を始めていた。

しかし…….

「(ああ、『パルファン』子!)」

エヴァンジェリスト少年の頭には、『妻』と決めた1学年下の美少女の像しか浮かんでいなかった。『妻』と暮らす『新しい世界』が、動画となり、脳裏を回った。


(続く)



2019年11月24日日曜日

ハブテン少年[その101]




『少年』は、その年(1968年)、毎週楽しみにしていたテレビ番組『泣いてたまるか』が終了し、『青島幸男』の他にも、『渥美清』の回ではない回に主役となった『中村嘉葎雄』という、兄である『中村錦之助』よりも好ましいと思えた役者を見れなくなるのは残念であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


************************





「(『パルファン』子、君はもうボクの『妻』だ)」

『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)2年生のエヴァンジェリスト少年は、下校途中の1学年下の『パルファン』子さんに交際を申し入れただけであったが、心の中でもう彼女を『妻』としていた。

「ボクと付き合ってくれないかなあ?!」

という自分の告白への

「….考えます」

という回答を、勝手に、

「一生、連れ添います」

といった風に捉えていたのだ。

「エヴァ君、どしたん?」

ブラスバンドの練習中、同学年でトロンボーンを吹く友人のジャスティス君が訊いてきた。



「ん?」

友人の質問の意味が分からなかったが、笑顔で振り向く。

「なんか嬉しそうじゃねえ」
「そう?」
「なんかええことあったん?」
「んん?」
「なんねえ」
「ふふ…..」


(続く)




2019年11月23日土曜日

ハブテン少年[その100]




『少年』は、その年(1968年)、毎週楽しみにしていたテレビ番組『泣いてたまるか』が終了し、『渥美清』の回ではない回に主役となる『青島幸男』という、これもなんだか味のある役者を見れなくなるのは残念であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


************************





「(そうだ、『パルファン』子さんは…..)」

晴れやかな顔という言葉は知っていたが、実際には見たことはなかった。しかし今、エヴァンジェリスト少年の顔は、まだ見ぬその顔となっていた。

「(『考えます』と云ってくれたんだ!)」

拒絶ではなかったのだ。

「(名乗りもしなかったのに、『考えます』と云ってくれたんだ!)」

つい今しがたまだ名乗らなかったことで後悔の波に飲まれていたのに、名乗らなかったことが、今、少年の顔を晴れやかにしていた。



「(そうだ!『パルファン』子さんは、ボクのことを知っていたんだ!)」

『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)校内でのことを思い出した。

「(そうだ!何度も、眼が合ったんだ!)」

校内では、休憩時間や音楽室、理科室への移動の時、放課後と、機会があればいつも『パルファン』子さんの姿を探し、時に、思い通り、その姿を見かけることがあった。『パルファン』子さんが、自分の方を見た、と思ったことも幾度かあった。

「(きっと、『パルファン』子さんも『素敵な先輩!』なんて思ってたんだ!)」

それは多分、妄想であったが、絶対に少年の勝手な妄想とは言い切れなかった。

「….考えます」

確かに、少女はそう云った。下校途中に突然呼び止めてきた名乗りもしない少年に、

「ボクと付き合ってくれないかなあ?!」

と云われたら、叫び出して逃げ出してもよかったであろう。しかし、実際には、逃げ出すこともなく、凝視め返し、

「….考えます」

と云ったのだ。少女も、少年のことを憎からず思っていたと考えてもおかしくはない。


(続く)



2019年11月22日金曜日

ハブテン少年[その99]




『少年』は、その年(1968年)、毎週楽しみにしていたテレビ番組『泣いてたまるか』が終了し、もう切ない気分になれなくなるのは残念であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


************************





「(ああー!名前ー!)」

エヴァンジェリスト少年は、そこに蚊がいたら、木に空いた空洞と勘違いして入ってしまいかねないように、呆然と口を開けていた。

「(自分の名前を云わなかったあ!ああ!)」

彼の自宅前を通って帰宅する『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)で1年下の女子生徒『パルファン』子さんを追い、廃線となった宇品線を超え、旭町の狭隘な道で彼女に追いつき、

「ボクと付き合ってくれないかなあ?!」

と、思い切って云ったものの、自分の名前を『パルファン』子さんに告げなかったのだ。

「(ああ…..)」

恥ずかしかった。大事なところで、またケアレスミスをしてしまったのだ。



「(名乗りもせずに告白するなんて、ああ、間抜けな男と思われただろう)」

……しかし、眼前に浮かぶ『パルファン』子さんは、じっとエヴァンジェリスト少年を凝視めていた。そして、おもむろに口を開いた。

「….考えます」

そうだ!それは、幻でも妄想でもなかった。確かに、『パルファン』子さんは、云ったのだ。

「ボクと付き合ってくれないかなあ?!」

という名乗りもしない上級生と見える少年の問いに対して、

「….考えます」

と答えたのだ。

「んぐっ!」

再び、股間に手を持っていった。


(続く)



2019年11月21日木曜日

ハブテン少年[その98]




『少年』は、その年(1968年)、毎週楽しみにしていたテレビ番組『ウルトラセブン』が終了し、もう『アンヌ』という日本人ぽくない名前の綺麗な女性のウルトラ警備隊員に会えなくなるのは残念であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


************************





「(でも、ボクと『結婚』してくれないか、なんて云えない)」

自宅の子ども部屋で、股間を抑えたままエヴァンジェリスト少年は、思う。

「ボクと付き合ってくれないかなあ?!」

彼の自宅前を通って帰宅する『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)で1年下の女子生徒『パルファン』子さんを追い、廃線となった宇品線を超え、旭町の狭隘な道で彼女に追いつき、そう声をかけたのだ。

「(他に云いようはなかったんだ。あれでいいんだ…..ああ!)」

が………その時、気付いた。

「(ああっ!?)」

小学生の頃から、担任の先生に指摘されていたのだ。

「(ああ、どうしよう!?)」

両手を股間から外し、頭を抱えた。



「明らかに頭はいいのに、ケアレスミスがあります」

先生は、残念そうにそう云った。確かに、算数でも理解力は誰よりも高く、計算も誰よりも早かったが、簡単な計算ミスをすることが少なくなかった。

「(しまったあ!)」

『パルファン』子さんに対してもケアレスミスがあったことに気付いたのだ。


(続く)



2019年11月20日水曜日

ハブテン少年[その97]




『少年』は、その年(1968年)、毎週楽しみにしていたテレビ番組『ウルトラセブン』が終了し、もう『モロボシダン』という聞きなれない名前の格好いい男に会えなくなるのは残念であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


************************





「ボクと付き合ってくれないか?!」

広島市旭町の狭い道で、少女は振り向いた。『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)で1年下の女子生徒『パルファン』子さんに追い付いたエヴァンジェリスト少年の口から、言葉が出た。

「ボクと付き合ってくれない?!」

本能が発した言葉であった。しかし、自らが発したその言葉に疑問が湧く。

「(付き合うって、何をするのだ?隠れんぼをするのか?え?2人だけで隠れんぼか?友だちを誘うのか?)」

隠れんぼも楽しいとは思うが、『大人』になってきた自分がしたいことはそれではないことは、分っていた。

「(2人でどこかに出掛けるのか?でも、どこに行くのだ?翠町公園か?公園に行って何をするのだ?滑り台か?ブランコか?)」

いや、そんなことでは我慢はできない自分を知っていた。

「(ウチに入れるのか?平日は、夕方まではボク以外はウチに誰もいない。『パルファン』子さんのウチに行くのか?彼女のウチにも平日、夕方までは家族はいないのか?)」

妄想が膨らむ。

「(家族がいなかったらどうなんだ?いないと、できるかもしれない。何が?少なくともキスは…..ああ、いいのか!?中学生がいいのか、そんなことをして!?」

妄想以外のものも膨らむ!

「(んぐっ!)」

少年は、股間を抑える。

「(いや、したいのは、キスではない!いやいや、キスもしたいが、それ以上のことだ。ああ、『結婚』だ。でも、まだ中学生なんだ。でも……)」



胸で大きく呼吸をする。

「(んぐっ!)」

再度、股間を抑える。

「(したい!けれど、『結婚』は、まだ許されないのだ。ボクにはまだ稼ぎがない。『妻』を食べさせていくことはできない。でも……)」

もっと強く股間を抑える。

「(んぐっ!)」

『パルファン』子さんの像が、眼前に浮かぶ。

「(したい!けれど……)」


(続く)