2019年11月17日日曜日

ハブテン少年[その94]




『少年』は、その年(1968年)、好きであったNHKのテレビ番組『ジェスチャー』が終了したことで、もう、小川宏アナウンサーの名司会ぶりを見れなくなったのは残念であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


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「(云ったああ……)」

自宅の子ども部屋に戻ってもまだ、エヴァンジェリスト少年は、胸で大きく呼吸を繰り返した。

「(云ったぞお!)」

座ることも出来ず、子ども部屋の窓から外を見る。そこに、『パルファン』子さんの影を追う。いるはずがないことは分っていたが、窓から見える道路は、『パルファン』子さんに、『パルファン』子さんが帰るであろう彼女に家に、繋がっている。そこに意味があった。



「(でも……)」

時間が経ってくると、気持ちはまだ静まらないものも、思考には冷静さが戻ってきた。

「(どうしよう……)」

自分がとった行動を思い出した。眼の前に、『パルファン』子さんの像が浮かぶ。

「(どうして、あんな風に云ったんだろう?)」

その日、応接間から、垣根と門越しに道路を見ている時、今日こそは『行動』を取る、と決めていた。

「(『パルファン』子さんに云うんだ)」

そのことは決めていた。自宅前の道路を『パルファン』子さんが通ったら、彼女を追いかけ、声を掛けることは決めていた。

「(『パルファン』子さんに云うんだ)」

しかし、決めていたのは、それだけだったのだ。


(続く)



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