『少年』は、その年(1968年)、好きであったNHKのテレビ番組『ジェスチャー』が終了したことで、もう、小川宏アナウンサーの名司会ぶりを見れなくなったのは残念であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その93]の続き)
「(云ったああ……)」
自宅の子ども部屋に戻ってもまだ、エヴァンジェリスト少年は、胸で大きく呼吸を繰り返した。
「(云ったぞお!)」
座ることも出来ず、子ども部屋の窓から外を見る。そこに、『パルファン』子さんの影を追う。いるはずがないことは分っていたが、窓から見える道路は、『パルファン』子さんに、『パルファン』子さんが帰るであろう彼女に家に、繋がっている。そこに意味があった。
「(でも……)」
時間が経ってくると、気持ちはまだ静まらないものも、思考には冷静さが戻ってきた。
「(どうしよう……)」
自分がとった行動を思い出した。眼の前に、『パルファン』子さんの像が浮かぶ。
「(どうして、あんな風に云ったんだろう?)」
その日、応接間から、垣根と門越しに道路を見ている時、今日こそは『行動』を取る、と決めていた。
「(『パルファン』子さんに云うんだ)」
そのことは決めていた。自宅前の道路を『パルファン』子さんが通ったら、彼女を追いかけ、声を掛けることは決めていた。
「(『パルファン』子さんに云うんだ)」
しかし、決めていたのは、それだけだったのだ。
(続く)
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