『少年』は、その年(1968年)、好きであったテレビ番組『てなもんや三度笠』が終了したことで、もう、『あたり前田のクラッカー』というコマーシャルが見れなくなったのは残念であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。
だって、ハブテルと、
「あんたあ、ハブテンさんな」
と母親に叱られるのだ。
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(ハブテン少年[その81]の続き)
「(んぐっ!)」
エヴァンジェリスト少年は、一瞬、足を止めた。
「(いや、ちが、違うんだ!)」
『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の正門を出て少ししたところで前方に見かけた女子生徒2人の後を歩いていたのだ。
「(ボ、ボ、ボクの家もそっちなんだ!)」
2人の女子生徒の一人の面長な日本的な顔に酔い、十数メートル後ろを付いてきていた。女子生徒たちが、右に曲がれば右に曲がり、左に曲がれば左に曲がった。
しかし、それは偶然にもエヴァンジェリスト少年の通学路そのものであったのだ。
そして、自宅への道の最後の道角を、女子生徒たちも、エヴァンジェリスト少年の自宅に向う方向に曲がったのだ。
「(んぐっ!)」
角を曲がるとき、面長な日本的な顔の美少女は、一瞬、こちらを見たように思え、エヴァンジェリスト少年の足が止ったのだ。
「(んぐっ!)」
困惑と胸の動悸と体の別のある部分の『異変』に、エヴァンジェリスト少年は、顔を赤らめた。
「(後をつけてるんじゃないよ!)」
深呼吸をし、脳と体を鎮め、また歩き始めた。
「(ボクの家もそっちなんだからね)」
道角を自宅に向う方向に曲がる。
「(ふうう……ふうう……)」
『異変』が生じないよう、大きく呼吸しながら、進む。それでも、
「「(んぐっ!)」
面長な日本的な顔の美少女は、並んで歩くもう一人の女子生徒の方に顔を向ける時、横顔を見せるのだ。
「(ここなんだ。ボクの家はここなんだ)」
自宅前まで来たところで、道をまだそのまま直進する女子生徒たちを見遣りながら、名残惜しそうに、
「(だから、入るよ。家に入るよ)」
と、後ろ髪を引かれるとは、このようなことなのか、と自宅に入った。
(続く)
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