2019年11月6日水曜日

ハブテン少年[その83]




『少年』は、その年(1968年)、好きであったテレビ番組『てなもんや三度笠』が終了したことで、もう、『キビシー!』と云う蛇口一角(財津一郎)を見れなくなったのは残念であったが、そんなことではハブテン少年ではあったのだ。

だって、ハブテルと、

「あんたあ、ハブテンさんな」

と母親に叱られるのだ。


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「(待ってて!)」

と、急いで門を開け、玄関の鍵も開け、靴を揃えることもなく脱ぎ捨て、エヴァンジェリスト少年は、子ども部屋に入ると、部屋の窓から外を見る。

「ふううんっ!」

鼻息を吐いた。『ミドリチュー』(広島市立翠町中学)の正門を出て少ししたところで前方に見かけた女子生徒、面長な日本的な顔の美少女は、もう見える訳がないことは分っていた。十数メートル以上先を歩いていたのだ。しかし、少女が今、通ったばかりの道路を見ると、そこに残像が見えるように思えた。

「(1年生だ、きっと、1年生だ)」

前年度(1967年度)には、『ミドリチュー』で見かけなかった少女だ。制服は新しく見えたので、1年生と思えた。

「(なんていう名前だろう?)」

という疑問は、程なく解かれた。同じ中学の生徒だ。しかも、1年生であることはまず間違いなかったことから、その解明にはさほどの時間は要さなかった。

どのように調べたのか、エヴァンジェリスト少年の記憶は定かではないが、後に『人間Siri』と云われる男は、中学生の頃から、その調査能力はずば抜けていたのだ。いやもっと前、『帰国子女』子ちゃんの住まいをストーカー的行為で調べ上げた小学生の頃から、狙った獲物は逃さない男であったのだ。



「(『パルファン』子っていうのか)」


(続く)




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